中小企業経営者にとって悩みが尽きない、人の問題。良い社員を採用・育成し、定着させるにはどうすればいいか。人事制度コンサルタントの松本順市氏が語る。

・問1 IT人材を高額年俸で採用してもいいですか?
・問2 「こんな安月給では結婚もできない」と若手社員がぼやく
・問3 ジョブ型にすると、働かない社員の給料を下げられる?
・問4 職務記述書にどんな要素を入れればいいか分からない
・問5 仕事はできるが、勤務態度が悪い古参をどう処遇すればいい?
ENTOENTO代表
ITに詳しい人材を特別な高額年俸で採用してもいいですか?
答
日本はメンバーシップ型雇用の下、新卒社員を採用し、必要なスキルを一から教育してきました。これまでIT(情報技術)に強い人材を育ててこなかった会社では、そうした業務を担える人が欲しいと思っても、社内にいないのは仕方ありません。
基本的には社外から採用することになるでしょう。注意したいのは、なぜ採用するのかという目的です。ITに強い人を採用すること自体が目的化し、採用後にどんな成果を期待するのかが明確ではない企業が多いからです。
期待成果を具体的に決めないのは、どれくらいの営業成績を上げてほしいかを示さず、営業職を採用するようなものです。「ITは苦手なので、職務要件は作れない」と言い訳をする経営者もいます。
ただ、専門的なことは理解できなくても、どんな成果を期待するかは示せるはずです。生産性を高めたいなら、デジタル活用で引き上げる1人当たりの粗利額などの数字で期待成果を決める。ネット通販事業を立ち上げるなら、いつまでにどんなサービスを始め、売り上げは○○万円まで上げるといったゴールを定めます。
期待成果を決めたら、まず社内で募集してみます。「○○の要件を満たす人はいませんか。期待成果を実現できる場合は年収1000万円を払います」。社内で適当な人材がいれば、それに越したことはありません。誰も手を挙げなければ、社外から採用します。
この手順を経ることで、IT人材を中途採用しても社内の不満の声を抑えられます。期待成果の大きさがはっきりしていれば、それをこなせるIT人材を高給で雇うという判断も理屈が通ります。
採用したIT人材には、社内で人材育成の協力もしてもらいます。ITに強い社員が1人、2人と育ってくれば、教えたIT人材を一般職から中堅職、管理職へとステップアップさせて、その成果に報います。IT人材の転職市場は活発です。人を育てる面白さと、それに伴うさらなる高給によって離職を防ぐのです。
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