初回値上げで妥協しない

 今回のコスト上昇局面は、日米金利差からくる円安や世界的なサプライチェーン停滞などの複合的な要因が絡む。この傾向がある程度の期間にわたるなら、値上げも1度では終わらない可能性がある。

 「初回の値上げ時に『値上げ幅を半分にして取引先と痛み分けにする』『耐えられるコスト上昇分は吸収して据え置く』と言う経営者がかなりいる。だが初回で妥協したら2回目、3回目の値上げ要請では説明がさらに難しくなる」

 値上げ交渉ができない理由として、競合他社に切り替えられてしまうことを懸念する経営者もいるが、金子社長はこうも話す。

 「中小企業の再生の中では、コストを見ながら値上げをして再生するのが王道で、実際値上げはできる。原価計算して不採算になっているような単価なら、他にその単価で供給してくれる競合他社など実際はほぼない」

 中小企業は、取引が特定の企業に偏っているために交渉力が弱く、取引先からのコストダウン要求をずっとのんできたところが少なくない。そうした企業にとって今の局面は追い風だと言う。

 「自社が値上げされている原材料費は、競合他社も間違いなく値上げされている。これだけ値上げが言われている状況で、交渉はやりやすいはず」。大事なのはきちんと採算が合う取引にすること。でなければ会社が持たない。企業再生の場面だけでなく、今回の局面も全く同じだ。

工程見直し原価を下げる

 値上げ交渉の一方、値上げができれば当面安心、とはならない。これを機に、事業のプロセス全体をもう一度見直し、コスト上昇への耐性を引き上げる努力が必要だ。

 今まで使っていた材料や副資材、物流手段が高騰していれば「そもそもこの材料をこの量だけ使う必要があるのか」「別の素材や手段で代替できないか」「工程を短縮できないか」などと改めて検討する。

 「これは、値上げ交渉とは切り離して実践するほうがいい」と金子社長は言う。その理由はこうだ。

 値上げ交渉に成功しても、実際の値上げは3カ月後からなど、タイムラグがあり、その間はひっ迫した状態が続く。そのマイナス分をカバーするための対策が望ましい。「もし利益が確保できたらどこかでその分を取引先に還元してもいいし、自社で確保して競争力向上につなげることもできる」。

 次ページから、対策ごとに具体的な取り組みの例を見てみよう。

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