(特集 中小企業「値上げ実態」調査 前回の記事はこちら)

 取引先の要請に応じて値下げをし、取引を維持、拡大する。値下げ分は経費のコストダウンを図って何とか吸収する──。急激なコスト上昇局面でこうしたやり方がもはや成り立たなくなった。中小企業はどのような戦い方をすればいいのか。取材では大きく3つの方向性が上げられた。

 1つ目は値上げ交渉。「原材料の価格上昇分を転嫁」といった目先の状況だけでなく、中期的な想定に基づいた値上げ幅から交渉をスタートすべきという。

 2つ目は、王道の対策である値上げと並行して、現状の事業のプロセスを見直し、さらに原価を低減する企業努力をすること。

 3つ目が、自社がより価格決定力を持つ製品や、利益性の高い新規事業に取り組むことだ。

中期的インフレを想定

 「原材料は今、価格が上がっているだけではなくモノがない状態。多くの企業は原材料メーカーからの値上げをほぼ100%受け入れざるを得ない状況だろう」。中小企業の私的再生を多く手がけるMODコンサルティングの金子社長はこう言う。さらに、燃料費や光熱費は、価格が上がれば即座に経営に影響する。

 こうした状況への対応策は「基本的にはコスト上昇分の100%を値上げで転嫁すべしが鉄則」(金子社長)という。

 ただし、注意すべきことがある。例えば「原材料費が10%上がった」場合、それを交渉材料に「価格を10%上げてほしい」が取引先によっては通じない場合がある。

 仮に原価率が60%でそのうち原材料比率が3分の1なら製品価格に占める原材料費は20%。そこが10%上がっても価格ベースでは2%にすぎない。この値上がり分で妥協してしまうケースが少なくないという。

 企業物価指数が大きく上がる中、消費者物価がそこまで上がっていないのは中間コストを多くの中小企業が吸収しているためだ。だが中期的には必ずコスト上昇は転嫁されてインフレになっていき、人件費を物価なりに上げなくてはならない局面が想定される。そのとき原材料費分しか上げていなければ、また単価が合わなくなる。

 「想定される未来に向けて一定の利益率を確保するため、原材料費が上がったら値上げ幅も同じ率にして、交渉をそこから始めるべき」

次ページ 初回値上げで妥協しない