プロ野球チームに入団した瞬間は、希望もあり、夢に燃えてエネルギーもあります。そのとき自分が何を考えていて、親がどんな期待をしていたのか。後に苦しい場面が訪れたときに見ると、きっと力になると思います。そういう武器のようなものを持たせるのが僕の仕事だと思って、僕は自分との約束を破るなというメッセージを伝えました。

 時々「あれを読んでいるか」と選手に聞くことはあります。自分が覚悟したことだよな、と。他人事にさせないことが大事です。自分のチームと思っているか、人のチームに参加していると思うかで、選手の気持ちは全然違います。会社も同じですよね。「自分ごと」に持っていくと、自分の生かし方も分かります。結果が出なくて苦しい。でも、結果が出なくてもやれることはあると気づくと、一気に技術が伸びることもあります。

 一方的に教えるのでは意味がありません。選手が自分で気づくことが重要です。だから僕は「気づかせ屋さん」なんです。

 これはコーチに対しても同じです。最後の決断は僕がしますが、練習メニューはすべてコーチに任せています。人は任せないと本気になりませんから。誰かが言っているからやる、という空気ではその人の能力は発揮されないので、100%その人を信じて、前に進む努力をしてきたつもりです。

 結果が出ないときでも同じです。僕は野球において正しい、間違っているという言葉を使うのが嫌いなんです。正解なんてありはしません。その選手に合うものを真剣に考えているかどうかです。その真心さえあれば、選手と共に何かを生み出せるはずです。生み出せないのは、真心が相手に伝わっていないということでしょう。

人は3日で変われる

 僕は毎年、開幕のときに酒杯にその年のメッセージを書きます。最後の年に僕は「刮目相待」と書きました。人間は3日あれば変われますよ、という意味です。この言葉の起源である『三国志』で、力のある武将が勉強して人を超えたという例を挙げて、人間、必死に野球をすれば3日でも変われるかもしれないでしょ、という僕からのメッセージです。

 僕自身、選手時代に大きな結果を残したわけではありませんし、監督になったときも周囲からいろいろ言われました。それでも、必ず変われると信じてやってきました。ドラフト外のテスト生としてプロ野球の世界に入った人間が、こうして長く野球の世界にいられるのは本当に幸せなことだと実感しています。だから、選手たちに大事な言葉を残してあげたいと思っているのです。

(この記事は、「日経トップリーダー」2022年6月号の記事を基に構成しました)

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