加盟店には、冷凍食品は今後も伸びていくビジネスであることを改めて伝えたほか、国内の流通事業者で唯一、国内工場を二十数拠点も保有しているという自社の強みや輸入元の半数を中国から欧米に切り替えるといった施策も伝え、1年以内に事件前の水準に戻すことを約束しました。

 とはいえ、輸入元を切り替えれば出張のコストや海上輸送費もかさみます。考えることは容易でもリスクが高く、なかなか踏み切れない企業も多かったことでしょう。そんな中で、(業務スーパーを運営する)神戸物産ではオランダやエジプトにも会社をつくって情報収集に努めました。

 ただ、消費者の間に中国製食品に対する抵抗が強かったこともあり、コストが1〜2割高い欧米製の冷凍食品も「安全には代え難い」という理由でよく売れました。大きなピンチがチャンスに変わった瞬間です。

 冷凍食品の売り上げ拡大は20年前から少しずつ始まり、今後さらに伸びていくと予想しています。

病気をきっかけに承継

 私が50歳で甲状腺がん、60歳で脳幹脳梗塞を患ったこともあり、早々に事業を引き継いだほうがいいと考えるようになりました。製薬会社の研究職に在籍していた博和社長が「神戸物産を継ぎたい」と言ってくれたため、12年に社長を退き事業承継を行いました。

 そこからしばらく2トップ体制でしたが、博和社長は私より優秀でバランス感覚もよく、将来性もあると感じて、すべて任せることに決めました。

 17年に神戸物産の顧問を退いた後は神戸物産の本社には行きませんし、口出しもしません。博和社長が自宅に来た時も仕事の話は全くしません。「もし万が一必要なことがあったら言ってください」と伝えているだけです。

日本の課題を解決

町おこしエネルギーは日本のエネルギー問題、食料問題と向き合う
町おこしエネルギーは日本のエネルギー問題、食料問題と向き合う

 神戸物産から退いた後に設立した町おこしエネルギーは、日本が抱えるさまざまな社会問題と向き合うための会社です。

 向き合う問題の1つが、化石燃料の輸入です。日本の貿易赤字の多くは化石燃料によるものです。化石燃料をできるだけクリーンな純国産の再生可能エネルギーに変えていくことは急務です。そこで着目したのが地熱発電でした。

 併せて食料自給率の問題にも取り組んでいます。政府は食料自給率を40%から45%まで引き上げるという指針を発表しています。しかし、現状は37%とむしろ悪化しています。

 そこで、北海道和種の馬を活用した耕作放棄地の再生や、北海道産牛をまるごと仕入れて当日加工する十勝精肉加工場と飲食店「肉丼亭」の運営、熱水を利用した南国フルーツの栽培、バナメイエビやオニテナガエビといった甲殻類の完全養殖、水の浄化に役立つヤマトシジミの養殖などを手掛けています。

 町おこしエネルギーのこうした事業は、今は採算度外視ではありますが、循環して利益として戻ってこなければ、事業は継続できません。皆さんに助けてもらって何とかここまでやってこられた事業です。恩返しの意味でも将来のメリットにつながるものを今後もつくっていきたいと思います。

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