売れなくても我慢して本物を売ろう。そう決めて、現地の味を変えないオリジナル商品を販売し続けたところ、今では驚くほど売れるようになりました。
販売に当たっては、設備の見直しから行いました。海外の冷凍ケースは日本人の平均身長を考えると深すぎて商品に手が届きません。日本の冷凍ケースと同じ高さにするために底の部分を下げました。ファンやドレン(水抜き装置)の角度や幅などをすべて再設計して作り直したのです。薄利多売を脱するためには、商品だけでなく設備面からすべて見直すことが必要なのです。
フランチャイズも泥仕合に巻き込まれないための手法です。私のビジネススタイルの基本は「パワー×スピード」。本部は商品の輸入やオリジナル商品を作ることに特化する。これがパワーです。そして、スピードは加盟店さんに参加してもらうことで補います。コンテナの保管料金などでスケールメリットを出すにしても、スピード感は非常に重要です。
右から左に商品を流す薄利多売では時代の変化についていけません。あるときに少し利益が出ても、あるときには大きな損をする。このビジネススタイルには限界がきていると感じます。
勝負時を見極める
業務スーパーを創業から約20年で900店舗以上に拡大できた理由の1つに、時代の変化にうまく適応できたことが挙げられると思います。
1号店がオープンした2000年当時、既に高齢化や少子化、核家族化は誰もが認識している社会現象でした。同時に、コンビニエンスストアやインターネット販売が今後伸長していくことも、誰もが想定できたことでしょう。
ですが、中には大家族の方や家族経営の店舗のため卸売業者に配達してもらえないといった方もいる。我々はその小さなニーズをすべて取り込んでいくことを考えました。
全く新しい考え方で新しい流通をつくり、小さなニーズを拾っていったのです。その結果、20万人に1店舗という商圏だったものが10万人に1店舗でも採算が合うようになっていきます。将来的には5万人商圏も目指せる段階に来ています。
新しいビジネスはどうしても先行者が勝ちます。ところが、現在のコロナ禍のように大きな社会的変化が起こり、影響が長引くにつれて、先行者が体力を消耗することもあるでしょう。そんなときに、勝負を見定めて次の新しいことに集中投資できる会社が、新しい時代に合う手法を考えて実行していくことになるのです。
20年前に冷凍食品に注目
「勝つための3原則」の最後の一つは「20年先、30年先を考えて動く」こと。例えば20年前から力を入れていた冷凍食品は、今大きなブームを迎えています。
先ほども触れた通り、20年前に既に核家族化は進んでいました。若い女性が仕事にも生きがいを感じながら、結婚して家庭も持つ。そしてみんなが一緒に協力して家庭を盛り上げていく。今は、昔のように毎日買い物に行って、ゆっくり調理する時間を捻出できる時代ではありません。生鮮食品中心の商品展開では限界があります。
商品の劣化を防ぐための手法は4つ。塩蔵、乾燥、冷凍、包装加熱です。この中で手軽かつほぼ添加物なしで長期保存ができるのが冷凍です。これは必ずビジネスになると考えました。ところが、08年に中国製冷凍ギョーザの中毒事件が起こり、加盟店の売り上げに大きなダメージがありました。
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