「休業開始月」と前年または前々年を比較
(3)は、休業で売り上げ減が続いている会社は問題ありませんが、売り上げの変動がある場合は注意が必要です。売り上げ5%以上減の判定は休業開始月で判断します。例えば、休業開始月が4月であれば、4月の売り上げが前年の4月または前々年の4月の売り上げと比較し、5%以上減少していることが要件です。
(4)は、「休業手当」の支給率を設定する上での注意事項です。
例えば、パート社員には通常時の賃金の100%、幹部クラスの高給の正社員には平均賃金の60%と支給率を変えた場合を考えてみましょう。この場合、従来はいずれか低いほうに合わせる基準でしたので、助成額の算出はパート社員も含めて全社員に対し平均賃金の60%の支給をしたものと取り扱われていました。
しかし、5月29日に厚労省から公表された内容によると、支給率100%のパート社員の人数が支給率60%の正社員の人数よりも多い場合、正社員も支給率100%とみなして助成額の計算ができるようになりました。つまり、一部の正社員には平均賃金の60%とせざるを得なかった場合でも、「社員の生活を守る」という経営者の使命に基づき、パート社員も含め大半の社員に対し、通常時の賃金の100%を支払っていれば、個々の支払率は度外視され、事業所全体の支払総額と延べ日数で助成額の計算が行われるのです。
休業要請対象外の中小企業の場合、前述のように、平均賃金の60%まで10分の9の助成(実質54%の助成率)となり、60%を超える分は国から全額補助(トータルで実質94%の助成率)されますが、もし一部の正社員に支給率60%であったとしても、事業所全体で支給率100%の社員が大多数を占める場合、一部の支給率60%の正社員も実質94%の助成率になります。
休業手当の支給率を戦略的に設定し、社員の生活を守ることと企業の資金負担軽減の両立を追求してください。そのパターンとして、次の3つが考えられます。
1つ目のパターンは、小学生以下のワーキングマザーの社員に対して、前述のように100%の休業手当を支払い、「雇用調整助成金」ではなく、「小学校休業等対応助成金」で全額補助を図ることです。なぜなら、「小学校休業等対応助成金」は、企業の売上5%減といった要件がなく、小学生以下の子供を持つ等の社員個人の属性だけが要件であるため、使い勝手がよいからです。
2つ目のパターンは、自治体による休業要請対象の中小企業で、外食産業などパート比率が高い場合、100%の休業手当を支給し、「雇用調整助成金」での全額補助のチャンスを最大限生かすことです。
3つ目のパターンは、休業要請対象外の中小企業の場合。1日当たりの上限額1万5000円、月給の上限33万円への引き上げを視野に入れ、理想は会社と社員双方にとってバランスがいい80%程度の休業手当を支給し、「雇用調整助成金」によって60%まで10分の9の助成、60%を超える分は全額補助を受けることです。
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