サプライヤーに決定権

ワークマンのサプライチェーンは、他社にはない独自のものだと聞きます。

土屋:加盟店が当社を信じて商品を全量買い取るのと同じく、メーカー側が需給予測に基づき自主納品した商品を、ワークマンが全量買い取ります。なぜならメーカーは、ワークマン以外にもいろいろなところと取引があり、多くの情報を持っているからです。

 国内メーカーの場合、ワークマンが出す需要予測による推奨値に、自分たちの経験を加味して出荷数量を決定します。例えば、北海道は8月末から冬物がかなり売れます。自動発注は8月の全体傾向しか捉えていませんから、彼らが一足先に入手した北海道の取引先の情報を入れて、修正してくれる。すると、もっと精度の高い需給予測ができるというわけです。

 すべてが「善意」で動いていて、加盟店は本部を、本部はメーカーを信じる。これを当社では「善意型サプライチェーン」と呼んでいます。

 メーカーにも、「在庫が増え過ぎないようにしてくれ」とは言いません。「メーカーが最適と考えたものを受け入れる」と伝えて、すべて任せています。

 命令やノルマやプレッシャーではなく、自主的に善意で回っている。資本主義では売り上げ第一、利益第一なのでしょうが、どうも違うのではないかと最近感じ始めています。

<span class="fontBold">ワークマンにはユニークなヒット商品が多い。上は背中がジッパーで開き、リュックを背負ったまま着られる「BAG in レインジャケット」。下は、ジョギングシューズのような履き心地の「走れるJOGサンダル」</span>
ワークマンにはユニークなヒット商品が多い。上は背中がジッパーで開き、リュックを背負ったまま着られる「BAG in レインジャケット」。下は、ジョギングシューズのような履き心地の「走れるJOGサンダル」

信頼は無形の資産

善意で動くと、漏れやこぼれといったものが出てきませんか。例えば、メーカーの発注に任せて欠品が起きるケースはないのでしょうか。

土屋:日本人は良心的で、自分の会社ではなく、お客側につきます。加盟店のマネジメントに携わっているうちのスーパーバイザーもそれは同じです。メーカーにも、ワークマン側の人間がいて、数量に関して非常に良心的です。自分たちの決算の都合などで、物を押しつけることをしない。そのほうがいい仕事になりますし、長くお付き合いできます。

 今後は海外メーカーとの取引にも善意型を導入していくつもりです。中国のメーカーとは十数年前に取引を始めましたが、1社も落ちていません。

 中国企業はドライだと言われますが、実は日本企業以上にウエットで、作り置きをする。横流しするつもりかと思ったら、うちのために作って、工場の2階に保管してくれていたことがありました。「ワークマンのために1カ月分の在庫を余計に持っている」とか、そういうところが多いのですよ。

 だから、やたら仕入れ先を増やすな、メーカーを変えるなと言っています。信頼は得難い無形資産なのです。

しつこいようですが、メーカーに自社の思い入れの強い商品を多めに入れたいといった感情が働くこともある気もします。

土屋:それは、回転率で出てきます。入れたものが失敗したかどうかを全部管理していて、「○×△」といった評点をつけています。

 回転率がかんばしくないときには、メーカーと一緒になって対策を考えます。ただ、そのとき絶対に怒ってはいけません。

なぜ怒ってはいけないのでしょうか。

土屋:怒ったら、義務感によって善意が失われ、脅迫されてやる「ムチのサプライチェーン」になってしまうからです。

 日本企業は、ペナルティーやノルマといったムチでたたくことが多い。でもムチを使って事を進めようとすると、かえってみんな萎縮して、サプライチェーンがゆがみ、ろくなことがない。

 恐怖政治のようになれば、「在庫をたくさん持って失敗したくない」とか、「ペナルティーを支払いたくない」といったマイナスを避けるほうが主になって、プラス面が減ってしまうのです。

 期限だとかノルマだとか、縛れば縛るほど時間がかかり、品質も下がり、結局として数字も悪くなる。そうしたものが一切ないほうが、むしろいい数字が出る。だから、すべて善意で回したほうがいいのですよ。

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