価値を生む仕事だけやる

通常、FC本部はロイヤルティー(経営指導料)を確保すべく、「もと売れ」「もっと働け」と加盟店の尻をたたくと思うのですが。

土屋:そんなことは一切しません。月末に「予算が達成できないから、もう少し売り上げを積んでくれ」と発破をかけることはしない。

 もともと店舗がきちんと品出しをして陳列さえすれば、必ず売れる商品以外は置きません。特に、売り上げの約6割を占めるプライベートブランド(PB)は、他社が絶対に5年間は追いつけない機能か価格、もしくはデザインを目指しています。

 だから店舗で価値を生む主な仕事は、品出し陳列とレジ打ちの2つだけ。接客も聞かれれば売り場案内はしますが、商品説明は要りません。

<span class="fontBold">QRコードにスマートフォンをかざすと、アンバサダーのユーチューブに飛び、商品説明が聞ける</span>
QRコードにスマートフォンをかざすと、アンバサダーのユーチューブに飛び、商品説明が聞ける

 もっと詳しく知りたい場合は、店内のPOPのQRコードからアンバサダー(宣伝や商品開発などに協力するワークマンの熱烈なファン)のユーチューブなどに飛べば、情報を得られます。品出し陳列とレジ打ち以外は省力化すべき対象で、当然発注なんてしたら駄目なのです。

 どんな商品を置くかでお客様の利便性が変わります。お客様のためにも最適な在庫を持つことが重要ですし、利益確保の上でも発注は売れ行きを左右する生命線なので力を入れなければなりません。

発注はボタンを押すだけ

発注はすべて本部が取り仕切るのですね。

土屋:発注は、情報をたくさん持っている人に任せるのが一番いい。加盟店ではなく、多くの店舗での商品の動きを把握している本部のほうが適任なのです。

 第一、ワークマン1店舗当たりのSKU(品目)は、9000から1万もあります。その上、ロングテールの商品が多く、月に6個以上売れるのは全体のわずか1割。だから多くの商品が、在庫は1個しかありません。

 こうした条件を踏まえると、店長が適正な発注をするのは、かなり難しいのです。

 このため、市販のパッケージソフトをベースに、需給予測のアルゴリズムを内製化した「完全自動発注システム」を店舗に導入しています。加盟店は一括発注ボタンを押すだけでいい。

 ただ、これだけでは不十分です。専任担当者5、6人が集まり、隔週で「アルゴリズム検証会議」を開催し、適正な品ぞろえになっているかどうか、設定条件をこまめに見直しています。

 例えば、この商品の在庫設定が少し甘いのではないか、軍手が売れているのに軍手の在庫が少な過ぎるのではないかといった点をチェックして、日々微調整をかけています。

完全自動発注システムは、どれくらいの加盟店に導入されているのですか。

土屋:現時点で、半数の店に入っています。予測の精度を高めるため、あえて一挙に導入しませんでした。4年ぐらいかけて、発注システムの導入店と未導入店でどれぐらいパフォーマンスが違うか、ABテストで検証しているところです。

 ABテストでは、完全自動発注システムを導入済みの店は未導入店に比べ、概ね4〜6%売り上げが伸びるという結果が出ています。加えて、発注時間は2時間から2分へと大幅に短縮されています。自動発注システムは5年ほど前に手がけ始め、来年中には全店に導入される予定です。

店舗での主な業務は、品出し陳列とレジ打ち。発注は一括発注ボタンを押すだけでいいと、業務はかなり効率化されています。「加盟店の仕事は単純作業ばかりで、やりがいがないのでは」と言う人もいます。

土屋:加盟店は、自分でやりがいを見つければいい。本部なんかに委ねる筋合いはありません。

 常連のお客様に遠くから声をかけられても、誰なのかすぐに分かるツーカーの関係になっている人もいます。

 作業服しか持っていなかったお客様から「旅行に行くときに何を着ていったらいいか」と相談されて、作業服にも普段着にもなる服を選んで喜ばれたなど、「超」がつくフレンドリーなサービスでお客様の心をつかんでいるところもあります。

 また、ワークマンではインセンティブとしてさまざまな報奨金制度も用意していて、それを目標にしている人もいるのではないでしょうか。

店舗納品時に全量買い取りがルールですね。

土屋:「本部に任せます」と言ってくれた瞬間に、在庫商品は加盟店の財産になります。そこは直営店と違う。信頼を裏切れないので、こちらも真剣です。

それでも、このタイミングで売り上げが欲しい、ということもあると思うのですが。

土屋:我々が目指しているのは、1年や2年の競争優位や、市場ナンバーワンになることではなく、100年間の競争優位ですから、そんなことは考えません。5年、10年のシェアなんてゴミみたいなものですよ。

<span class="fontBold">発売から2日間で売り切れたという、裏返すと作業着に変身する高機能スーツ「リバーシブルワークスーツ」は、上下セットで4800円(10%税込み)。取り外せるフード付きで、耐久撥水加工が施されている</span>
発売から2日間で売り切れたという、裏返すと作業着に変身する高機能スーツ「リバーシブルワークスーツ」は、上下セットで4800円(10%税込み)。取り外せるフード付きで、耐久撥水加工が施されている

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