コロナ禍にあっても作業服大手ワークマンは依然、快走を続ける。その急成長の理由を、改革の立役者である土屋哲雄専務のインタビューから探る。

今回、焦点を当てるのは、フランチャイズ加盟店やサプライヤーなどの「取引先」だ。ワークマンと取引先は、従来の主従的な色合いではなく、「善意」により対等な関係を結んでいる。

尻をたたいて販売させたり、理不尽な値下げを強要したりせずとも、売り上げは伸ばせる。型破りな「ワークマン流取引先との関係づくり」を土屋専務の言葉からひも解く。


<特別リポート全体の目次>
・更新率99% ワークマンの「ホワイト」なFC契約の強さ

・ワークマン土屋専務「経営は性善説で回すのがいい」


ワークマンでは、とにかく「すること」「しないこと」が明確だ。その原理を社内のみならず、FC加盟店や提携メーカーにも展開。売り上げ目標もノルマもない。対面販売をしない。その型破りな管理手法とは。

土屋哲雄(つちや・てつお)
ワークマン専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当。1952年生まれ。東京大学経済学部卒業。75年三井物産に入社。2012年ワークマンに常勤顧問として入社。常務を経て、19年6月から現職。創業者・土屋嘉雄氏のおい

FC加盟店に売り上げ目標もノルマも課さないそうですね。

土屋:売り上げを伸ばすことが目標ではなく、自分の生き方やライフスタイルに合わせて働いてもらうことを一番に考えています。「東京に行った子供を呼び戻したい」と頑張っている店長もいます。結果として、子供たち3人は地元に帰り、店を引き継ぎました。

 もちろん「積極的に売っていきたい」という人も大歓迎ですが、世の中では多くの人が頑張り過ぎていると感じます。マニュアルに「頑張れ」とは書けませんよね。自分が働きたいように働けばいい。

 例えば、従来の「ワークマン」から、新業態の「ワークマンプラス」に切り替えれば、経験上4、5割ほど売り上げは伸びますが、「忙しくなるのが嫌だ」という加盟店には強要しません。

 当社は原則、営業が軌道に乗った店を加盟店オーナーに引き渡す仕組みです。そもそも「加盟店の店長の能力が高く、超人的に働いて、やっと利益が上がるような店はつくるな」と言っています。

ガツガツ働くのは困る

どのような基準で、加盟店オーナーを選んでいるのですか。

土屋:おかげさまで今、加盟希望者はめちゃくちゃ多い。長いお付き合いになるので、面接を4、5回した上で契約しています。売り上げを伸ばせそうな人というより、親切な人にお願いしています。

 あまりガツガツ働かれたら困るのです。仮に午後8時に店を閉めた後、午後10時まで残って商品整理をしている店長がいたら、すぐに止めにかかります。レジ締めは翌日の午後2時にやればいいので、閉店5分後には帰ってもらう。本部では、セキュリティー会社の入退室システムで、退出時間を日々チェックしています。

一般的な企業なら、「熱心ないい店長だ」と褒められそうです。

土屋:無理をすると、何事も長続きしない。体を壊してしまったら元も子もありませんから、少しでも早く帰って英気を養ってほしい。お客様も、店員が疲れ果てた顔をしているより、元気いっぱいなほうがいいですよね。

 それに、ワークマンの加盟店は親から子に引き継ぐケースが約半数と多いので、早めの帰宅が重要なポイントなのです。

 親御さんが長時間あくせく働く姿を見せ続けたら、将来お店を継いでくれません。

 ワークマンでは、「夫婦で店舗運営ができること」「夫婦ともに25歳以上50歳未満」(女性をターゲットにした新業態「#ワークマン女子」は40歳未満、接客業経験者)を加盟条件にしています。

 ご夫婦には勤務時間を分担してもらっています。例えば、旦那さんは朝と夜の時間帯を担当して、昼間は休憩する。奥さんは昼から夕方まで店にいるといったようにです。ワークマンの加盟店の奥さんは、保育園のお迎えが一番早いと有名らしいですよ。

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