ブランドとデザインは別

 にもかかわらず、ブランディングとは自社商品のデザインを美しく整えることだと誤解している人がいます。ブランド価値の中で商品が占める割合は半分以下。むしろ、商品より上の階層にある会社のビジョンこそが問われる時代になっています。

中川政七商店は全国で生活雑貨店を59店展開する。左は、2019年11月に開いた旗艦店「中川政七商店 渋谷店」の様子。右は定番商品の「花ふきん」
中川政七商店は全国で生活雑貨店を59店展開する。左は、2019年11月に開いた旗艦店「中川政七商店 渋谷店」の様子。右は定番商品の「花ふきん」

 もちろん、お客様との最初の接点は商品です。ただ商品に興味を持ったお客様はウェブを見たり、経営者のインタビュー記事を見たりして商品からビジョンへと遡って情報を集めます。このとき、発信内容の整合性が取れていることがブランドコミュニケーションには大事です。

 今は商品そのものの情報よりビジョンに関する情報発信が重要なので、逆三角形のピラミッドのようなバランスになります(下図)。

デザインより、ビジョンが重要
<span class="textColGreen fontSizeM">デザインより、ビジョンが重要</span>
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 例えば、洗剤ならどの商品でも汚れは落とせる。そうすると、他の会社と違う世界観があって、その思いがお客様に届くようなコミュニケーション設計ができている会社が一歩抜け出します。

 コミュニケーション設計とは、営業戦略や流通戦略、販売促進・PRといったお客様との接点を別々にではなく、総合的に構築すること。これを実現するために、数あるコミュニケーション手段の中から、顧客との接点をどのように持ち、何をどう伝えるかを考える。これが今の具体的なブランディングです(下図)。

ユーザーとの接点はどれを選ぶか
<span class="textColGreen fontSizeM">ユーザーとの接点はどれを選ぶか</span>
出所 :『経営とデザインの幸せな関係』(日経BP)
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 中川政七商店には「日本の工芸を元気にする!」というビジョンがありますが、このビジョンを張り出している店舗は1カ所もない。お客様に説教じみた発信をするのではなく、お客様が思わず読みたくなるような情報の差し出し方を考えることが必要です。

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