成長シートに当てはめる

中途社員の期待外れをなくすためには、前職の給料明細や職務経歴書ではなく、「成長シート」を使って面接をしてください。繰り返しますが成長シートとは、期待成果の達成度や重要業務の遂行度などを評価するものです。
これに中途採用の応募者の評価を当てはめていくのです。例えば「当社では一般職層の社員に求める重要業務はこれです。あなたはできますか」と細かく確認する。
ただし、気をつけなければならないのは、求職者は自分の力を高めに見積もって回答する場合が多いことです。「できますか?」と聞かれて「できません」と答えると採用してもらえないと考えるからです。そこで成長シートに沿って求職者の成長点数を付けたら、必ずこう伝えてください。
「これは、あなたの自己評価です。自己評価が高いので、まずは一般職層の一番上の3等級で採用しましょう。給料は30万円です。ただし、あなたが本当に成果を出せるのか、重要業務ができるかどうか、知識や技術を持っているのか、そして勤務態度は守れるかどうかは、やはり実際に働いてもらわないと分かりません。
そこで入社後は、3カ月ごとに評価をフィードバックします。入社半年後に成長点数が自己評価以上だった場合は、もちろん給料が上がる可能性もあります」
期待する業務を十分にこなせるかどうか、知識や技術をきちんと持っているかどうかは、入社後1カ月もすれば大体分かります。ただし、勤務態度の見極めには3カ月以上かかるでしょう。
「遅刻しないでください」「明るく接客してください」と求めて、実は前職でいいかげんだった社員が意識してできるのは最初の3カ月です。勤務態度を守っていた社員が、会社に慣れてくると遅刻を重ねることはよくあります。
そこで入社3カ月後に評価をフィードバックするのです。もし期待通りではない場合は、「あなたは80点の自己評価で入社したけれど、この3カ月の評価は60点です。成長してほしいので一生懸命指導しますね」と伝えてください。
こうしてさらに次の3カ月後の評価フィードバックを経て、入社6カ月後には給料と社員の成長度合い(成長点数)を一致させます。このような給料の見直しがあることは雇用契約書に記載し、必ず採用時に説明してください。
社員の人生を一番に
中途社員に高い給料を設定してしまったために、入社後の賞与を低くしたり、昇給させなかったりするケースが多く見受けられます。そうすると、その社員はモチベーションを下げ、だんだん「働かないオジサン」の予備軍になっていく可能性があります。
経営者は入社時だけ高い給料を提示して採用するのではなく、その社員の人生を長期的に考え、一般職層から中堅職層、管理職層へとどうすればステップアップできるのか、その際の給料はいくらなのかをきちんと可視化し、面接で伝えることが大切です。
「あなたの成長を応援していて、成長によって給料は上がっていくんだ」ということが求職者に伝われば、たとえ最初は前職より給料が下がったとしても、自身の成長のためにモチベーションを高くして働いてくれるのです。
ENTOENTO代表
(この記事は、「日経トップリーダー」2021年6月号の記事を基に構成しました)
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社員の採用・育成・定着を実現する
小社ではこのほど、松本順市氏の著書『1300社が導入した日本型ジョブディスクリプション』を発行しました。欧米発の「ジョブ型雇用」が大きな注目を集めていますが、人事制度のトレンドに左右されず、真に社員と企業の成長に寄与する評価・賃金の仕組みとは、どのようなものか。中小企業も大企業も、改めて人事制度を再構築するときです。豊富な事例とともに、あるべき姿を提示します。
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