中小企業経営者にとって悩みが尽きない、人の問題。良い社員を採用・育成し、定着させるにはどうすればいいか。人事制度コンサルタントの松本順市氏が回答する。

・問2 給料は高いけれど「働かないオジサン」にもう一度発奮してもらいたい
・問3 「人の2倍稼いだのに、賞与が同額とはおかしい」と社員に詰め寄られた
・問4 営業職の歩合給をやめたらモチベーションが下がった
・問5 高給で採用した中途社員が働かず、期待外れです……。
高給で採用した中途社員が働かず、期待外れです……。
答
日本の労働基準法では、入社時に給与額などの労働条件を提示する必要があります。その人の実際の仕事ぶりを見る前に、いくら給料を払うかを決めなければならないのです。これが、中途社員の給料問題を生み出す大きな原因となっています。
労働基準法は労働者を守るための法律ですので、企業は守らなければなりません。そのため、中途社員を適切な給料で採用するには、まず、従来の面接のやり方を変えてください。
通常、求職者に提示を求めるものは給与明細や源泉徴収票など前職での収入が分かる書類と、過去の職歴を明記した職務経歴書です。面接で応募者の前職の給料を知って、あまりの高さに驚いたことがある経営者は多いでしょう。
そんなときには残念ですが、丁重にお断りしてください。「あなたの前職の給料は、当社では部長クラスの給料です。うちでは出せません」。正直にそう伝えたほうが、互いにハッピーです。
面接時と話が違う
多くの経営者は、前職の高い給料に何とか近づけようとして「前職が50万円ですか。うちは40万円出せますが、どうですか」と給料交渉を始めます。これはNGです。前の会社は、前の会社の評価によって給料を決めているからです。
同様に、あなたの会社には、あなたの会社の評価があるはずです。それを忘れて「給料が高ければきっと優秀に違いない」と、収入によって優秀さを測り、無理して高い給料を払おうとすると、失敗する可能性が高くなります。
次に、職務経歴書を見ると、これまた輝かしい経歴が書いてあり、中小企業の経営者は驚きます。
「こんな仕事はできますか?」「あんな仕事、こうした業務の経験はありますか?」と質問していくわけですが、求職者はおそらく「できます」と答えるでしょう。
「経験が豊富ですね! すごいな」と喜んで採用を決めます。社員にも「すごい社員が来るぞ!」と伝えて、みんなが首を長くして中途社員を待ち、どんな仕事をするのかを見守ります。ところが実際に働いてみると、面接したときに聞いた話と違うことが多い。
「あれ? あの仕事もできないし、この知識もないじゃないか。それなのに給料を高く設定してしまった!」と、経営者は頭を抱えることになります。一度設定した給料は簡単に下げることはできません。優秀な社員が欲しいからこそ起こる問題ですが、このギャップは何とかしなければなりません。
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