中小企業経営者にとって悩みが尽きない、人の問題。良い社員を採用・育成し、定着させるにはどうすればいいか。人事制度コンサルタントの松本順市氏が回答する。

(写真/ PIXTA)
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・問1 「給料の高い会社に転職する」と言ってきた社員を引き留めたい
・問2 給料は高いけれど「働かないオジサン」にもう一度発奮してもらいたい
・問3 「人の2倍稼いだのに、賞与が同額とはおかしい」と社員に詰め寄られた
・問4 営業職の歩合給をやめたらモチベーションが下がった
・問5 高給で採用した中途社員が働かず、期待外れです……。
問4
営業職の歩合給をやめたらモチベーションが下がった

 歩合給は、個人の成果に応じて賃金が支払われる仕組みです。高い成果を上げれば、たくさんの歩合給が支払われますが、成果が上げられなければ、歩合給は低くなり、場合によってはゼロになります。成果主義の考え方を100%投影した賃金制度と言えるでしょう。

 私はこの歩合給制度は、欧米にはマッチしているかもしれませんが、日本の企業には合わないと考えています。

 欧米の場合、営業職として入社した人は退職日まで、ずっと営業職の一般職層です。しかし日本では、営業職として入社した社員は、一人前と評価されれば中堅職へステップアップさせます。そして営業所長などに任命されて、部下を持つことになります。

 通常は中堅職になると歩合給は適用されません。歩合給をモチベーションにしてきた社員は、このタイミングで中堅職へのステップアップを拒否するか、離職してしまうか、そのどちらかでしょう。

部長になりたくない

 歩合給の弊害を象徴するケースを紹介しましょう。

 従業員20人ほどのあるハウスメーカーでは、半数に当たる10人の営業社員に相応の歩合給を支給していました。あるとき、社長は優秀な営業社員に「営業部長をやってほしい」と笑顔で伝えたそうです。本来なら名誉でやりがいのある役職だと喜ぶところですが、その社員は喜ぶどころか、こう聞き返しました。

 「営業部長になったら、どれくらいの手当をもらえますか」

 社長としては、「営業部長になったらどんなことにチャレンジできますか」と聞いてほしかったところでしょうが、「役職手当を10万円出すよ」と伝えました。ところが、その社員は「それならお断りします」と言ったそうです。

 営業部長になると、歩合給がなくなるからです。その社員は10万円の手当よりも、頑張って営業成績を上げて、歩合給をもらったほうがいいと考えたのでしょう。入社以来、歩合給制度の中で、お金によって社員のモチベーションを上げようとしてきたら、こうなるのは仕方ありません。

 この件をきっかけに、そのハウスメーカーの社長は歩合給をやめることを決断しました。ところがこの決断によって、営業社員のモチベーションが下がって、10人中4人が辞めてしまいました。

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