青山恭明 (あおやま・やすあき)
青山恭明 (あおやま・やすあき)
1959年大阪府生まれ。自動車部品メーカー、不動産会社、学習機器販売会社の営業職などを経て、2007年サイエンストレーディング(現サイエンス)を設立。18年に発売したシャワーヘッド「ミラブル」は、累計販売数100万本を超えるヒット商品へと大きく成長。22年3月期の売上高は72億円(見込み)、従業員数85人(写真/太田未来子)

Q.資金繰りに窮して、倒産の憂き目に。失われた売り上げをいかに取り戻したのか。

A.顧客の声に耳を傾け、ヒット商品を開発

 サイエンスの代表的製品は、「ファインバブル」と呼ばれる微細な気泡で汚れを洗い流すシャワーヘッド「ミラブルplus」です。女性の頬に油性ペンで描かれた黒い線がシャワーの水を当て、軽くこするだけで落ちていくテレビCMに見覚えがある方もいるかもしれません。

シャワーヘッド「ミラブルplus」は4万4990円(消費税10%込み)。1000分の1ミリ未満の微細な泡を使い、汚れを落とす
シャワーヘッド「ミラブルplus」は4万4990円(消費税10%込み)。1000分の1ミリ未満の微細な泡を使い、汚れを落とす

 ミラブルは、お客様の声から生まれた製品です。当社は創業以来、水に関わる製品を開発してきました。

 その1つが、2010年に発売した「マイクロバブルトルネード」です。これは浴槽内に0・003ミリの微細な気泡を発生させる装置で、お湯に浸かるだけでミクロの泡が肌の老廃物を取り除くので、肌がつややかになります。

 ミラブル開発のヒントになったのは、14年にマイクロバブルトルネードの顧客を対象に実施したアンケートでした。回答を読むと、微細な気泡を顔や髪にまで行き渡らせるべく、湯船に顔をつけたり、髪を浸したりしている女性ユーザーが何人もいたのです。

 ならばと、最初はマイクロバブルトルネードの技術を組み込んだ美顔器を開発しようと思いました。ただ、いざ試作してみると美顔器はどうも使い勝手が悪い。美顔器を出してきて、コンセントを差し込み、水を入れる……と結構な手間がかかるのです。

 ではどうするか。浮かんだのは「毎日使うシャワーヘッドを美顔器にしてしまう」という発想でした。こうしてミラブルを18年に発売。テレビの情報番組で取り上げられたことやユニークなテレビCMが起爆剤となり、人気商品になりました。シャワーヘッドは年間10万本売れたら大ヒットと言われる中、ミラブルは発売から約3年間で80万本を売り上げたのです。

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