2019年10月の「即位の礼」に参加した各国元首への機内手土産に選ばれて話題になったチョコレートブランド「MAISON CACAO」。

 人気店が一堂に会すチョコレートの催事でも存在感はひときわ高く、商品を求める人たちで長い行列が生まれる。人気商品のアロマ生チョコレートは、鼻孔をくすぐる芳醇(ほうじゅん)な香りと、ふわりと溶ける口どけが特徴。ぜいたくで幸せな瞬間が味わえると評判だ。

アロマ生チョコレートの2022年新作コレクション「APPLAUSE」(アプローズは、拍手喝采という意味)。フレーバーは11種類(さくらんぼ、マンゴー、塩キャラメル、ダージリンなど)
アロマ生チョコレートの2022年新作コレクション「APPLAUSE」(アプローズは、拍手喝采という意味)。フレーバーは11種類(さくらんぼ、マンゴー、塩キャラメル、ダージリンなど)

 そんなチョコレートを開発・販売するのはメゾンカカオ(神奈川県鎌倉市)。2015年の創業で、オンラインストアのほか、東京、神奈川、愛知に7店を構える。21年9月期の売上高は約20億円。社員は60人でアルバイトを含めると約200人。

 同社を率いるのは、異色の経歴を持つ石原紳伍社長。中・高・大学とラグビーに青春のすべてを奉げたラガーマンで、リクルート出身の元トップ営業マンでもある。

 もともとはチョコレートが苦手だったと語る石原社長は、何をきっかけにチョコレートの世界にのめり込み、どのような経営哲学で人気店を築いていったのか。

 「ワンチーム」で戦える、組織づくりの秘訣を見ていこう。

メゾンカカオ 石原紳伍(いしはら・しんご) 社長
メゾンカカオ 石原紳伍(いしはら・しんご) 社長
1984年生まれ。大学3年生でトップ選手から帝京大学ラグビー部の初代学生コーチに就任。その後チームは全国大会9連覇を達成。卒業後はリクルートでトップ営業マンに。旅先のコロンビアで食べたカカオに魅せられ、2015年、鎌倉に1号店をオープン。現在は7店舗を展開(写真/菊池くらげ)

組織づくりのベースは大学ラグビー時代に学んだ

 メゾンカカオの経営哲学や組織づくりを語る上で欠かせないのは、石原社長の考え方や価値観を知ることだ。これまでどんな人生を送ってきたのか。中学時代から振り返っていく。

 小学生のときから体格がよかった石原社長は、中学に入るとラグビー部に入部。持ち前の素直さとひたむきな努力でめきめきと実力を付けていき、中学3年時には、大阪府の選抜チームのメンバーに選ばれ、キャプテンとして全国優勝を果たす。

 将来を期待されていた彼は、高校でもラグビー部に所属するが、2年時の試合中、選手生命をも脅かす大ケガをしてしまう。

 それでもリハビリを経て3年時に復帰するが、「大学のスポーツ推薦は2年時の実績がものをいう。もうラグビーの道はないと諦めかけました」と石原社長。

 そんなとき、救世主が現れた。帝京大学ラグビー部の監督が中学時の実績を買ってくれ、スポーツ推薦で拾ってくれたのだ。

 かくして大学でも大好きなラグビーがプレーできることになったが、ケガの後遺症もあり、故障を繰り返す。

 思うようなプレーができずにいた大学4年時のある日、石原社長は監督から「うちのチームを強くしたい。石原、学生コーチをしてくれないか」と頼まれる。

 これが石原社長の人生の大きな転機となり、メゾンカカオの経営スタイルの礎をつくる。

学生コーチに指名されて

 「ラグビーは中途半端にはプレーできないスポーツです。当たり所が悪ければ大ケガをするし、命を失う危険性もあります。そこは真剣勝負の舞台。そんな場所で戦うために、毎日つらい練習も耐えてきました。それなのに、選手を辞めてコーチをするわけです」(石原社長)。

 葛藤はあったものの、石原社長は腹をくくった。学生コーチとしてチームを支える道を選んだ。

 「ラグビーは、足が速いメンバーもいれば、力が強いメンバーもいて、それぞれ、特徴やポジション、役割や責務があり、自分の良さをチームの力に変えられます。アンストラクチャー(ラグビー用語で陣形が整っていない状態)な状況の中で、何を目指し、どのようにまとまり、やり抜くか。学生コーチをしてから、そんな視点でチームを見られるようにもなりました。これは企業のチームビルディングと共通の考え方ではないでしょうか」(石原社長)。

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