人口減・高齢化で地方経済の縮小が目立つ。その中で、工芸品など地域独自品の産地は比較的恵まれているとされた。しかし実態は、改革の進むところとそうでない地域の間に二極化が進む。地方企業の方向性を考えるシリーズの最終回は、富山県高岡市の能作などいくつかの会社を取り上げる。冒頭で紹介する能作は錫の食器などで世界的に知られる地場産業の革命児だ。(前回はこちら

能作社長(左端)は、かつて20年近く現場で鋳物作りをした経験がある
能作社長(左端)は、かつて20年近く現場で鋳物作りをした経験がある

 産地が革新を起こし、さらに長期的に自立するには、日本国内や世界に、その良さが認知されることも必要になってくる。破壊の次は「ブランド化」。それもまた産地全体ではなく、ある1社が先行していく。

 富山県高岡市の鋳物メーカー、能作の能作克治社長にとって、2001年春のあの日は忘れられないものとなった。

 高岡市は、国内生産の9割以上を占める銅器の一大産地。銅器もまた、銅の鋳物を作る生地作りから、それを磨く研磨、彫金、着色など各工程が専門業者の分業となっており、能作は1916年の創業以来、川上の「生地屋としてやってきた」(能作社長)。

 それがたまたま知り合ったデザイナーの紹介で、2001年に東京で催された工芸品展覧会に、試作した自社製品を出展することになった。運良くセレクトショップで扱ってもらえたものの、全く売れない。

 そのとき、店舗の従業員がふと漏らした「風鈴なら面白い」という一言から、試しに作ってみたところ大ヒットし、メーカーへの道を歩み始めた。

常識外れの錫の食器

 偶然が重なったかような成功譚だが、実のところ能作社長にとって自社製品の開発は長い間の心願のようなものだった。

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