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人口減・高齢化で地方経済の縮小が目立つ。その中で、工芸品など地域独自品の産地は比較的恵まれているとされた。しかし実態は、改革の進むところとそうでない地域の間に二極化が進む。人口減経済は決して一様ではない。地方企業の方向性を考えるシリーズの3回目。(前回はこちら

ジーンズのフルオーダー制という斬新な仕組みを生み出したベティスミスの大島社長

 今年3月末まで、半年間放送されたNHKの連続テレビ小説「スカーレット」。信楽焼の女性陶芸家の草分け、神山清子をモチーフに、苦難に直面しながら懸命に生き、陶芸家として成長していく主人公の姿が人気を集めた。

 しかし、信楽焼自体の生産額は1992年の168億円をピークに、2018年には33億円へと5分の1に、事業所数は約4分の3に減ったという。

 タヌキの焼き物でも知られ、全国的に知名度の高い信楽焼の意外な“苦境”の裏にあるのは、人口減に加えて、生活スタイルの変化による陶器離れ、そして中国製の安い製品が流入してきたことがある。

 信楽焼だけではない。伝統的工芸品産業振興協会のまとめによると、伝統的工芸品の生産額は1974年の3840億円から、83年には5410億円に増えた。

 それ以降は横ばいを続けたが、90年に5080億円を記録した後、右肩下がりで落ち始め、2016年には960億円へ、やはり約5分の1に減少している。

 人口減・少子高齢化ニッポン。今回からは、工芸品をはじめとした産地の今と、そこに生きる中小企業の苦闘と奮闘を見ていく。

産地は明暗二極化

 名古屋市近郊のある繊維産地は、製造品出荷額が1990年代初頭に比べ、約4分の1に落ち込んだ。江戸時代中期に既に綿織物の産地として知られたこの地域は、明治に入ると毛織物に転換し、昭和になると国民の洋装化もあって生産高を順調に伸ばした。

 ところが、73年に第一次石油危機が起き、為替が変動相場制に移行して高度成長が終わりを告げる頃から、状況は大きく変わる。

 輸出の縮小や消費者需要の多様化とそれに伴うアパレルメーカーの台頭、合繊の普及などで、利益が縮小していった。

 さらに90年のバブル崩壊以後は需要自体が低迷し、一段と厳しさを増した。従業員数は90年代だけで半減している。

 このように生産額の縮小はほとんどの産地に共通するが、一部の産地は、独自の動きで活路を見いだしている。

 産地の名に寄りかからず、独自のマーケティングによるブランド化。市場や技術の変化に応じた柔軟な新商品開発。市場が縮小しても生きていける仕組みをつくる産地と、そうでない産地を分かつのは経営者のイノベーションだ。