「経営者としての資質は不透明だが、ともあれ、我が子に会社を継がせたい」そんな承継の王道が崩れつつある。親族以外の有能な人材を社長に据える中堅・中小企業が増えているのだ。事例と成功の要点をリポートする。

(写真:PIXTA)
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<特集全体の目次>
・事業承継ドクター協会 佐奈徹也氏 承継には「年齢表」を使う
・株式の承継に足かけ7年、社員への事業承継を成功させるには
・取引先の社員が赤字会社を承継、社員20人から500人へ事業を拡大
・事業承継の失敗談 私は有能な後継者候補の豹変に気づけなかった
・古田土経営 飯島社長「先代を立てることで事業承継はうまくいく」


 ある経営者が事業承継の失敗について、匿名を条件に取材に応じてくれた。数年前、親族外承継を念頭に、社内の若手エースを常務まで引き上げた。しかし、収入と権力を手にした社員は、陰で傲慢な言動を取るようになる。

(写真:PIXTA)
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 私は2代目としてある不動産会社を継ぎ、父の事業をさらに発展させるかたちで、いくつもの新事業を立ち上げました。子供は娘が1人。昔から経営に興味がないようでしたので、親族以外から次の経営者を探すのは自然でした。

 候補の1人が、私より25歳ほど下のAでした。まだAが入社して1、2年の頃、ある製品の売り方について直接、提案を受けました。製品の種類ごとではなく、セットにして顧客に提案営業をすれば売り上げを伸ばせると、具体的な金額を上げて説明するのです。

 「確かにそれは一理ある。仮に君に任せたら、チームはどうする」と尋ねたら、「私に不足している商品知識は○さんに、営業面は○さんに加わってもらえば、良いチームが出来ます」。他部署の先輩社員とチームを編成するプランには、説得力がありました。

新規事業で頭角を現す

 Aの上司に当たる部長と課長に意見を求めたら「面白いから一度やらせてみましょう」と同意が得られたので、新しい組織をつくってAをリーダーに据えました。

 Aはコントロールタワーの役割を見事に果たします。社内の資産を活用し、人をマネジメントし、売り上げを大きく伸ばしたのです。これをきっかけに、Aは社内で一気に頭角を現します。その後も社内の主要ポジションを次々に経験し、30代半ばで、また別の新しいサービスを企画。それが短期間で数億円を売り上げます。

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