『嫌われる勇気』の著者で、哲学者の岸見一郎氏がリーダーのあり方を説く連載の第63回。誰からも理解されない孤高のリーダーはありえない。自身の行動が部下に理解されなければならないと指摘します。さて、その理由とは。

 リーダーは他者と違うところに立ち、これから先に起こりうることを予見できなければなりません。とはいえ、先に何が起こるかが決まっているわけではありません。時には、思いもよらないことが起こります。

  そのため、予見するのが容易でないことは本当ですが、同じところに立っていれば何も見えないので、他者とは違った地点、地平に立って他者とは違った見方ができなければなりません。

 古来、天才と称せられた人は、時代を先駆け、その創造性ゆえに同時代人から理解されないことがありました。哲学者の三木清は、リーダー(三木は「指導者」という言葉を使っています)は、一人で物を作る天才とは異なる資格が必要だといっています。

「他から理解されないような指導者は何等指導者ではない。指導者であることのうちには他から理解されるということが含まれている」(「指導者論」『哲学ノート』所収)

 誰からも理解されない孤高のリーダーはありえないということです。

「指導者は自己の行動を他に理解させ、これによって他の協力を得るようにしなければならぬ」(前掲書)

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