債務超過になっていた飲食店運営会社の湯佐和を父の逝去とともに継ぎ、40億円の借入金を完済した湯澤剛社長が当時の心境を振り返る。
 気性が激しく怖く、会社を借金まみれにした父に対し、後を継いだ当初は恨みや嘆きの感情ばかりが先に立った。だが、父の日記を読み返したことで、その気持ちに変化が。経営を大きく好転させる。

 「人が輝き 地域を照らし 幸せの和を拡げます」──そんな理念に基づく経営を私が推し進めた背景には、亡くなった父に対する見方の変化もありました。

 私にとって父はとにかく怖い存在でした。父が飲食店を開いた当初、自宅のすぐ下が事務所で、板前を怒鳴りつける父の声を聞いては、臆病な私は震えたものです。

 中学・高校と全寮制の学校に進んだのは、両親の勧めもありましたが、父と距離を取って安心したいからでもありました。

 長男でしたが、家業を継ぐ気など全くありませんでした。弁護士を目指そうと大学は法学部に進むも、挫折。一般企業に就職する過程では、父の面子を潰しました。父が取引先のビール会社に就職できる根回しをしていたのに断り、競合のキリンビールに入社。自分の力を父に示したかったのです。

 それだけ家業に対する抵抗感があっても食品メーカーを選んだのは、どこかで「いつか継ぐ日が来るかもしれない。そのときには土地勘があったほうが有利」と思っていたのかもしれません。

 図らずもその予想が現実のものとなり、私は父の会社を継いで40億円の借金を負いました。資金繰りが苦しい当初は、父を恨むばかりでした。

 そんな父には日記を書く習慣があり、日々の仕事内容に加え、心情も克明に記していました。

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