最近の事業承継ビジネスの拡大は、今までM&Aに縁のなかった圧倒的多数の企業や個人に、事業の引き受け手としての可能性を提供しました。

 今や事業承継は、単に親から子へ事業がそのまま引き継がれるだけではなく、全く異なる能力やキャリアを持つ経営者へ承継されることにより、新しいビジネス展開を日本中で生み出す原動力となっています。

 もともと日本人はゼロから1を生み出すよりも、0.1を1にしたり、0.5を1.5にするほうが得意な面があります。以前の経営者がやってきたものを引き継ぎ、磨きをかけて良くすることが意外とうまくいくという側面が見えてきたのです。

 引き継いだものに磨きをかける買収後のプロセスを最近では「リブランディング」と呼びます。1つの例を挙げましょう。

 瀬戸内海の向島という島にA社という小さな飲料を売る店がありました。昭和5年の創業という老舗ですが、その実は小さな島でラムネやサイダーを細々と売っている飲料会社です。

 小さな島でそんなに多くの量が売れるわけではありませんから、古い機械を使って昔ながらの製法で毎日売れる分だけを作っていたわけです。

 70代のご夫婦が経営しており、子供も継ぐ意志はないということでM&Aのご相談があったわけですが、今までの常識では到底M&Aの対象にはならなかったろうと思います。

 そんな事業の承継先は企業ではありませんでした。地元の44歳の公務員、つまり個人の方だったのです。