あなたの会社で働き方改革が進まない原因は、人事制度にあるかもしれない。売り上げや利益だけで社員を評価するのではなく、時間当たりの生産性で評価する時代だ。評価項目には「生産性」が入っていなければ、会社は働き方改革を本気で進めようとしていないかもしれないと疑ったほうがいい。

松本順市(まつもと・じゅんいち)
ENTOENTO代表
1956年生まれ。中央大学卒業後、鮮魚店に入社し、社長の参謀役を務める。業界初の働き方改革に取り組み、サービス残業ゼロを実現。社員が成長する人事制度を構築し、東証2部上場の原動力となる(現在東証1部)。その後独立し、人事コンサルタントとして1261社の中小企業を指導する

(前回はこちら

 新型コロナウイルスの影響で時短勤務や在宅勤務が広がっており、これが働き方改革を加速させるという見方がありますが、それは会社次第です。ビデオ会議の導入などでテレワークの環境を整えても、生産性が上がるとは限りません。働く場所が会社から自宅になっただけで、労働時間は同じというのでは意味がないのです。

 冷静に考えてください。深夜まで残業しようが、休日に自宅で働こうが、売り上げ・利益を上げた社員を褒めるのが、これまでの時代です。そうした人事制度を残したまま、見かけ上の労働時間を減らしても、必ず社員は隠れて働きます。そのほうが評価されて賃金も増えるなら、当然でしょう。

 約1300社を指導してきた私の実感では、いまだ99%の企業が売り上げ・利益で社員を評価しています。処遇に至っては、かなりの割合を年功給が占めている。生産性を上げて働き方改革を進めようと声高に叫びながら、評価・賃金制度は昔ながらのもの。

 このようなちぐはぐな状態で生産性が上がるわけがありません。時間当たりの成果が高い社員を褒めるという、評価のパラダイムシフトが不可欠です。

できるだけ簡単な指標を

 では、どんな項目で評価すればいいのか。

 全社共通でこれ、という都合のいいものはありません。私が働いていた鮮魚店では各店の売上高と粗利、生産性という3つの数字で評価をしました。生産性は1時間当たりの粗利(粗利÷労働時間)を指標にしました。たった3つの数字を追うだけですから分かりやすいと思います。

 生産性指標は簡単なものがいい。難しい計算式で算出する指標は誰も見ません。前回も書いたように北海道の牧場では、「1時間当たりの搾乳量」を生産性指標にしています。「時間」は必須ですが、売上高や粗利でなくても構いません。社員に期待する生産性は何か。そこから、あなたの会社の生産性を計る指標を考えましょう。

 「あの社員の働き方は効率的だ」などと感覚的に捉えるのは危険です。数字なら「甘辛評価(評価者によって甘い、辛いが分かれること)」と無縁。「君の人時生産性は5000円だが、私から見たら4000円だ」なんて上司の主観が入り込む余地はありません。

 残業時間が正確に分からない「みなし残業」は廃止します。多くの会社でみなし残業を導入している理由には、残業代を計算しやすいことと、経営者の気持ちのどこかに「みなし残業の規定時間を少しくらい超過しても社員は許してくれるのでは」という甘えがあるからでしょう。正確な数字を出さないと生産性を改善することはできません。

 もちろん、生産性の結果だけで社員を評価するのではなく、生産性の高い社員がしている業務、その業務をするために必要な知識・技術の習得、そして勤務態度など、会社が求める働き方に基づいて評価項目をつくってください。繰り返しますが、私が問題にしているのは多くの企業において、そもそも生産性に関する評価項目が1つも入っていないことです。

次ページ 間接部門も生産性で評価