高付加価値しか残らない

アトキンソン:人がいないのなら、地方に住まなければならない特別な理由が必要です。要するに都会でできないことです。昔は農地がある場所に人が住みました。日本酒づくりも農業の延長線上にあります。

 今は何か。観光もその1つでしょう。

 賃金の話もそうですが、地方には付加価値の高いものしか残りません。

山本:平和酒造は今まで1つも輝くようなモデルがなかった。今人が集まってくるのは、他県、さらには世界に売り出せる高付加価値のモデルになったからです。

 入社以来、和歌山という地域性をいかに武器にするかと考えてきました。そして梅酒や、和歌山の清らかな水を使い、紀州の風土を象徴する「紀土」という日本酒で和歌山のテロワール(地域色)を打ち出しています。

 低賃金で大手の下請けになるかつての地方モデルでは先がありません。高給を払ってでも地方で成立する高付加価値のビジネスモデルをつくる必要があります。

 今後は、海外から日本の地方都市に日本酒を飲みにくるというのが1つの価値になるとも考えています。

人口増加時代には、大量生産で売り上げが伸びましたが、人口減少時代はブランディングも含めた戦略が必要です。

アトキンソン:昭和の時代の方法は令和時代には合わないということです。今までどうだったかを基準にして物事を考えている経営者は、時代が変わったことを理解できていません。

 「生涯現役です」と70代、80代でも経営者を続ける人がいますが、その人の時代の生産性のままでは会社の実績も下がっていきます。社員など他の人を犠牲にしてまで自分の都合を貫くべきではない。

山本:オーナーだから自分の会社を好きにしていいというのではなく、会社は1つの公器だということを考えたときに、うまく継承していくことが求められます。

 息子を後継者にしようと望むオーナーは多いかもしれませんが、例えば働き手の1人に代表権を譲って経営者になってもらう、あるいはほかの会社と統合する形でうまく継承することも考えられます。

アトキンソンさんは、「日本は、2060年までに中小企業の数を現在の半分以下に減らすべき」という中小企業淘汰論を唱えています。

アトキンソン:そもそもの前提として、日本企業の99.7%は中小企業とひとくくりにされますが、社員が2人の会社もあれば299人の会社もある。360万社のうち357万社をあたかも全部一緒だというのは暴論です。

 一般論として望ましいのは、大企業と中堅企業が中心になっている経済構造です。

 日本の中小企業は海外から見れば小規模事業者。大企業と定義されている会社は、海外から見れば中堅・中小企業です。

 日本に圧倒的に多い小規模事業者は、中堅企業か大企業を目指す最初の段階。ここを通過するか、あるいは通過できなかったら淘汰されていく。

 中小企業経営者の役割は、会社を中堅企業や大企業にするか、あるいは(売却も含めて)退場を選択することなのです。

山本:日本酒業界では、大企業は今でもパック酒を安く作り、たくさん売るという旧来型のビジネスモデルを維持しています。

 小さな酒蔵が、イノベーションを起こして成長し、中堅企業を目指さなくてはなりません。

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