「経営者はビジョンこそ大事」。長く信じられてきたこの常識は今後も通じるのか。 強いリーダーがビジョンと圧倒的な指導力で人を動かす時代は変わろうとしている。 階層のないフラットな組織──。ITの進化、テレワーク浸透などの社会変化により、 社員の発想と自主性をすべての起点に動く企業が増えてきた。 経営の発想転換が迫られる。

(写真/PIXTA)
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<特集全体の目次>
なぜ、組織はフラット化に向かうのか
ティール組織、個人事業主化…「自由」な仕組みが社員を強くする


 フラットなティール組織が意識するのは、個人の自主性と発想を生かすこと。だが、SAPのように企業が社員を支援する側に回ることでピラミッド組織も大きく変わる。「社員は管理する対象ではない」。企業は社員に伴走して、一体となって伸びる。コロナ後の経営は新たな局面を迎えようとしている。

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 前回紹介した木村石鹸や東邦レオ、あるいはSAPなどの動きの中にうかがえるのは「企業とは何か」という問いかけのように思える。

 「会社という固定的な存在があるわけではない」。木村社長がそう言うように、結局は人の集合体である。それなのに、企業という存在があるかのように上からの命令で人を動かしていたとすれば、その命令のもととなる「智」は多くの場合、社長、役員といった一部のものでしかない。

 フラットな組織は、それを変えようとしている。社員が多くの智を得られるようにし、またそれを生かそうとしている。鍵は企業とは何かという出発点を変える思想の問題なのだろう。

 競争の激化、サービス産業化、技術の進化、そしてコロナ禍といった環境の変化が今、そうした思想の変革を促している。

 「大事なのは、社員それぞれが(日常の企業活動を)自分ごととして考えるかどうか」。半導体製造装置大手、ディスコの関家一馬社長兼CEO(最高経営責任者)は常にこう言う。当然のようだが、それを実現するために他社にはまずない独特の仕組みをつくっている。「Will(ウィル、下の囲み参照)」という社内通貨を設け、社内のあらゆる活動を付随させることで、社員を個人事業主のようにしているのである。これによって社員は個人事業主のように自身の活動の収支がはっきりと見える。それを改善する活動は、ディスコの業績・競争力に貢献する活動を増やし、無駄を減らしていくことにもなるという。

 Willとは 

 例えば、営業員が外部に製品を販売すると、その売価に一定割合を上乗せするなどしてディスコからウィルを受け取る。一方、営業員は販売のために物流や社内システムを使うと、その担当部署や社員に経費としてウィルを支払う。加えて自分の人件費も費用として計上する。会議室を使えば、使用料を払い、他の社員に応援を頼むときには、その対価を払う。

 ディスコは2003年に部署単位でウィルをやり取りする「部門ウィル」を導入。11年から個人単位でやり取りする「個人ウィル」に移行した。例えば、業務も部門長が部署内で毎朝、一部をオークションにかけて落札した人が仕事を受けるかたちを取っていたりする。

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