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「日経トップリーダー」2020年4月号の特集「コロナ危機下のBCP」から、事業継続を考えた取り組みを実践し、経営力強化に結びつけている企業の事例を紹介する。4社目は山口県岩国市で住宅用給水管の設計・組み立てを手がけるカワトT.P.C.だ。同社は、生産性向上をとことん進めることで、思わぬトラブルに強い事業継続力の高い組織を実現している。(前回〈4〉はこちら

 「昔からインフルエンザによる学級閉鎖や学校閉鎖は1週間単位であった。政府の休校要請もそれの延長だと思えるし、どうしても対処し切れない事態が起きたら、そこから必死で取り組むだけ」

 住宅用給水管の設計・組み立てのカワトT.P.C. (山口県岩国市)の川戸俊彦社長は余裕の構えだ。

カワトT.P.C. の川戸社長(写真/橋本正弘)

 カワトの主力事業は、マンションやホテルなどで使用する給水管の設計と組み立て。物件ごとに仕様が異なるものを1つずつ人手で組み上げる。

 強みは、複数の工場で製造する「拠点分散」「管理のシステム化」「従業員のモチベーション向上」。どれも使い古されたキーワードだが、徹底して取り組んだ結果、自然災害や感染症拡大といったリスクへの対応力が高まった。

カワトT.P.C.の概要

業 種 住宅用給水管の設計・組み立て

創 業 1989年

売上高 50億円(2019年3月期

従業員数 345人

複数の工場でリスク分散

本社工場の様子。生産管理を徹底し、「チームAは翌日の午後3時〜4時に大阪府のAマンションの5階の部屋で使う配管を製造する」というレベルまで把握できる(写真/橋本正弘)

 カワトは全国に5工場を持つ。きっかけは、東日本大震災などを経て納入先の大企業から、BCPの観点で「1社依存を避けたい」と言い渡されたことだった。複数購買になると、不毛な価格競争に巻き込まれて消耗すると考えた川戸社長は、供給責任を果たすと約束して拠点分散を開始。1社購買を継続してもらった。

 岩国市内に給水管の組み立て工場が4つある。最も新しい工場は、JR岩国駅近くで1階にスーパーマーケットが入る商業施設の最上階。現在は12人規模と小さい。

 一般的に、拠点が分散すれば管理が難しくなるし、管理や物流のコストも増える。しかし、カワトではそうならない。人件費がかさむ工場長などを一切置かないフラットな職場だからだ。

 工場長など管理者がいなくても済むのは、全工場をカバーするシステム上で生産指示や管理ができる仕組みづくりと、最大10人程度で構成されるチームへの権限委譲が進んでいるためだ。