社員を大切にすることが、企業の安定成長にもつながる。そんな「年輪経営」を提唱し、中小企業の理想型ともいわれる長野県伊那市の寒天製品メーカー。カリスマ・塚越寛最高顧問の長男として、新型コロナ下でどのように舵を取るか。

(聞き手 ・ 本誌編集長 北方雅人)

塚越英弘[つかこし・ひでひろ]
1965年生まれ。日本大学農獣医学部卒業後、自動機械装置メーカーに入社。97年に伊那食品工業に入社。専務、副社長を経て、2019年2月に代表取締役社長に就任。20年12月期の売上高は約180億円(写真/伊那食品工業(以下同))

木の年輪のように毎年少しずつ、着実に成長する。そんな「年輪経営」はコロナ下でも健在ですか。

塚越:もともと年輪経営とは、会社が潰れず、持続成長するためにはどうすればいいかと考えた結果、たどり着いたものです。稼げるところに資本を集中すると、環境変化の影響をもろに受けるリスクがあるため、製品の種類や販路を常に広げてきました。コロナ禍になり、その方向性はやはり間違っていなかったと実感しています。

 業務用の寒天製品はコロナの影響を大きく受けています。飲食店向けはもちろんですし、菓子の原料としてもよく使われるのですが、土産物用の菓子需要が落ちていますからね。その一方、家庭向けの寒天製品は巣ごもり消費で増えているので、全体では売上高が前期比1割減、利益は1割強の減少にとどまっています。

 昨年、サプライチェーンの問題が騒がれましたが、うちは海外から輸入する寒天原料は1年分の在庫を持っていますから、仕入れについては問題ありませんでした。

1年分の在庫を持つようになったのはいつ頃からですか。

塚越:何十年も前からです。原料用の倉庫が3つほどあります。普通はこんなに多く在庫を抱えませんよね。けれど、目先の効率を選択しないほうが、結果的にリスクヘッジになるのです。

給与は毎年増やす

コロナの感染拡大が始まった頃、社員に向けてどんなメッセージを出しましたか。

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