

著者 : 吉田 寛
出版社 : 春秋社
価格 : 2860円(10%税込み)
今回は吉田寛氏の『市場と会計 人間行為の視点から』を紹介します。著者の吉田氏は千葉商科大学会計ファイナンス研究科の教授で、公会計の分野で幾つか著作がある人物です。
私たち経営者にとって、会計という営為は重要かつ身近なものです。会社のあらゆる取引や売買が会計によって記録され、年度が終わるたびに自社の基礎的な状態を示す数字がその原則に基づき作成され、税務申告や関係者への報告のために開示されます。それらの重要性は誰もが承知しているはずですが、実際のところ「会計とは何なのか」を正しく理解し、相手の腑に落ちるように説明できているでしょうか。
本書の大きな特徴は、ややもすると無機的なものとされる会計について、人間社会の経済発達史の中で占めてきた役割を解説し、これまであまり語られていなかった方向から新たな輪郭を描き出す点です。
会計の語は夏王朝に由来する
冒頭ではまず、会計という言葉が『史記 夏本記』に由来し、「任せた仕事の出来栄えを評価する」という意味で使われていたことが語られます。
今から4000年以上前の中国で夏王朝を創始した禹(う)帝は、適材適所の人材配置を実現するため、仕事を任せた相手に実際に「“会”ってその功績を“計”り」ました。英語の「accounting」を会計と訳すのは、この故事にちなんでいるようです。
そしてこの会計こそ、取引を促進し分業社会を発達させるために必要な信任を生む源泉でした。他人の仕事や成果物を利用し統合しながら仕事をする中において、「望んだ仕事がなされているか」「求めた価値が提供されているか」を確認する行為は必須だからです。
私は証券会社で社会人生活を始め、財務諸表の読み方と企業分析を実地で学びました。そのおかげである程度は数字を読めますが、元来、数字に強いタイプではありません。そのため、「そもそも数字が嫌いだからできるだけ見たくない」という方の気持ちが痛いほど分かります。
そして卑近な体験から、会計を学び数字を読み取ろうとする上で最もやりがちなミスは、予想を持たずにいきなり数字を見てしまうことだと考えています。
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