最悪の事態を想定

 五つの対策に素早く取り組んだこともあり、レッグスの業績はコロナ下にもかかわらず、20年12月期の売上高は前期比3.7%増の171億2900万円、経常利益は同17.4%増の13億5100万円をたたき出した。

 数々の手が打てるのは十分な資金力ゆえでもある。かねて内川社長は何があっても従業員の物心両面の幸福が守れるように、内部留保を手厚くすることを重視してきた。

 危機に備えて内部留保を厚くする「ダム式経営」の実践だ。松下幸之助氏から稲盛氏が学び、それを元塾生に説いてきたものだ。

 内川社長はこの教えに従い、自己資本比率を50%前後に保つ方針を貫いてきたことがコロナ下で生きた。

 「プロモーション用のイベントが中止になるなど、コロナによる影響を受けたが、即座に最悪のシナリオを想定した業績と資金のシミュレーションをし、各種経費の節減を指示するとともに、現預金の安全水準を確認して、その上で資金調達による安全水準の維持確保を図った」(内川社長)。

 また、「ピンチは次の成長のチャンス」という稲盛氏の教えを見える形にした。コロナ下でミッションやビジョン、バリューを一新したのだ。「消費の仕方が変わっても買い物に楽しみや喜びを見いだす消費者の姿勢は変わらない」との内川社長の考えに沿い、「コト消費」を底上げする会社であるという姿勢を明確にした。

 内川社長は、不況を乗り切る五つの対策をはじめとする稲盛哲学と常に向き合うため、独自の工夫もしている。毎朝、5時半に起床し、1時間近く散歩をする際、稲盛氏の講演CDを必ず聞いているのだ。

 「『おまえはきちんと理念に基づいて経営できているか』と問われているような気がする。毎回、聞くと新しい発見があるし、目先の経営テクニックに流されなくなる。目標や手段ではなく、事業の目的に立ち返るいい機会になる」

 最近もCDによる学びがあったという。ダイバーシティ(多様性)や個性の尊重が叫ばれる中、社内の価値観をもっと多様化する必要があるのではないかと内川社長は考え始めていた。

 しかし、稲盛氏のCDで「社会としては価値観の多様化を受け入れる必要があるが、会社経営においては社員が辞める自由があるので、同じ価値観でなければ全社一丸となれない」といった話を聞き、認識の誤りに気づかされた。

 レッグスは20年、同業他社にM&A(合併・買収)を実施した。相手は元盛和塾生で、業態も近かった。両社とも社内で稲盛哲学を学んでいたので、非常に融合がスムーズに進んでいるという。「稲盛塾長の教えがなければ、東証一部上場企業にも到底なれなかったと思う」と内川社長は話す。

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