「日経トップリーダー」2020年4月号の特集「コロナ危機下のBCP」から、事業継続を考えた取り組みを実践し、経営力強化に結びつけている企業の事例を紹介する。3社目は岐阜市で菓子の製造・販売を手がける長良園(ながらえん)。社員が出社できない事態の発生に備え、少ない人数でも稼働できる柔軟な生産体制を築いている。(前回〈3〉はこちら

 想定外の事態が起きて工場に問題が生じた場合、通常と同じ状態に戻せなくても、可能な範囲で生産を続けることが事業継続には重要となる。その手段の1つが、柔軟な稼働体制をつくることだ。

 岐阜市で焼き菓子などを製造する長良園では、トヨタ生産方式を応用した生産改善活動に取り組み続けている。以前本誌で連載をしていたコンサルタントの山田日登志氏の指導を受ける。

 新型コロナウイルス騒動で効果を発揮すると想定しているのが、主力商品を個包装し袋や箱に詰めるラインで導入する仕組み。3人で担当していたラインを1人、2人、3人までどの人数でも高い生産性を発揮するように改善し、作業者の出社状況に合わせて担当人数を調整可能にした。

もとはパートの欠勤対策

長良園の市川社長。子どもが熱を出してパートが休む場合などに備え、柔軟に生産できるラインをつくった(写真/堀 勝志古)
長良園の市川社長。子どもが熱を出してパートが休む場合などに備え、柔軟に生産できるラインをつくった(写真/堀 勝志古)

 長良園は、コロナウイルス騒動の前から、パートの急な欠勤に悩まされてきた。「主婦は子供がけがや病気をすると休むことがある。それは責められないが、生産への影響を最小限にとどめたかった」と市川嘉宏(よしひろ)社長は語る。当日朝に欠勤の連絡があっても、生産計画の変更は難しい。結果として、本来の定員とは異なる体制で生産し、生産性の低下や不良の増加などトラブルが起きていた。

 そこで個包装ラインの改善を思い立った。もとは3人での生産を前提に組んでいた一直線のラインで、コンベヤーの上に商品を流しながら異物検査や個包装などを進めていく。

長良園の概要

業 種 菓子の製造・販売

創 業 1953年

売上高 約5億5000万円(2020年2月期)

従業員数 70人

 当初は1人で作業を完結できる「一人屋台」を複数台設置し、出社できる人数に応じて屋台の稼働を調整することを考えた。

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