今度は前回と違って何もかも自由に決められるオーナーです。意識や覚悟も違ったのでは。

藤﨑:起業経験もないのに融資してくれた金融機関の担当者、私に付いてきてくれたスタッフ、挑戦を応援してくれる家族……。みんなの期待は裏切れません。それは「絶対に成功させなければいけない」という大きな力になりました。

 売り上げを伸ばすことはもちろん重要ですが、居酒屋は癒やしや和みを求めるお客様が多い。数字の向こう側にあるものというか、「お客様が何を求めているのか、私たちのサービスで何を感じ、どう思うのか」をより意識するようになりました。

顧客視点、顧客体験をより意識するようになったわけですか。

藤﨑:はい。自分でもすごく想像力が鍛えられたと思っています。だから居酒屋オーナーとして大切にしていたのは、「相手がどう思うのか」ということでしょうか。

 お店は当初から予想以上に順調で、すぐに2店舗目もオープンしました。

そこまで順調なのに、その後、ハンバーガーチェーンのドムドムに行くわけですよね。

 ドムドムは最盛期は全国に400店舗を展開していましたが、事業縮小を重ねて店舗が30数店にまで激減。17年にホテル運営などを手がけるレンブラントホールディングスが運営会社を買収して再建に着手することになりました。

藤﨑:たまたま私の料理や接客を気に入ってくださっているお客様の中に、レンブラントHDで専務をしている方がいまして、「ドムドムのメニュー開発を手伝ってくれないか」と頼まれました。

開発会議に参加して意見を言う外部のアドバイザーのような役を任されたわけですね。

藤﨑:とても面白そうだなと。私はそこで「メニューを考えるならまずは店に行って食べないと」と考え、関東の行ける範囲の店を自分で回りました。すると大阪にある店舗にも行きたくなりまして、出張費を出してもらって行ったんですね。

 それで店ごとに雰囲気、客層、味、オペレーションの違いなどをリポートにまとめて、改善案も含めて提出しました。先方は意見をちょっともらうぐらいの感覚だったのでしょうか。「そこまでやるなら社員としてやってみませんか」と誘っていただきました。

アドバイザーと社員では大きな違いがありますよね。居酒屋も成功しているわけですし。

藤﨑:私はそのとき51歳。企業に勤めたこともない居酒屋のおばさんを社員として誘ってくださることに、勇気や情熱を感じ、感銘を受けました。

 ちょうど109時代から一緒に働いている女の子とも今後のことを話していました。彼女に独り立ちしてもらいたいというタイミングでもあったのです。なので彼女にお店を任せて私はドムドムに行くことにしました。