持ち株を譲り過ぎた

親子の方針が割れて対立することはあっても、渡部さんのように会社に出入りしなくなるところまで至ることは多くない。困ったときには相談に乗ってあげるような関係性があればよかった。

渡部:当時、京都の本社ビルの8階に持ち株会社のフロアがありましたのでそこは使っていましたが、7階より下には一切足を踏み入れませんでした。口を出さないと決めましたし、秀敏からも歓迎していない空気は感じましたから。

持ち株はどうしたのですか。

渡部:上場前、ある経営コンサルタントから「上場すると資産額が跳ね上がる。早くから準備をしないと、渡部さんにもしものことがあったら相続税などが大変なことになりますよ」とアドバイスされ、持ち株会社の株式を毎年、息子に生前贈与していました。

 持ち株比率が50%を切って、25%になったとき、経営権はどうなるのかなと頭をよぎったのですが、まあ、息子相手のことだから、ややこしいことにはならんやろうと、高をくくっていました。

 でも、社長交代してからしばらくしたとき、秀敏から「俺の会社や」と宣言されました。私の発言権を否定されたわけですから、もう持っていても仕方がないと、残りの持ち株を買い取らせました。

目黒雅叙園やメルパルクの社長はどうしたのですか。

渡部:それも秀敏の意向で早々に辞めました。「日経トップリーダー」の読者はオーナー経営者が多いのですよね。息子といえども他人さんだから、持ち株は経営権を維持できる51%以上を死守してくださいとぜひ言いたい。

 49%までは後継者に譲っていいけれど、それ以上はだめです。コンサルタントにそそのかされようが、その一線は絶対に越えてはいけない。結局のところ、今回、ワタベウェディングの経営が行き詰まってしまった遠因は、私の事業承継のまずさにあるのです。

 私は弟2人と会社を大きくしてきました。けれど最近は業績が低迷し、恥ずかしかった。意見も言えない。自分の名前を変えることはできませんから、社名から「ワタベ」を外してもらうように頼んでみようかと、少し前に、弟たちと話していたくらいです。


株式会社化からちょうど50年目
ワタベウェディングの歴史
<span class="fontSizeL">株式会社化からちょうど50年目<br /><small>ワタベウェディングの歴史</small></span>

(この記事は、「日経トップリーダー」2021年4月号の記事を基に構成しました)

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