みなみ・けいた
みなみ・けいた
1985年石川県生まれ。米カリフォルニア大サンディエゴ校経済学部を卒業後、2009年に大和総研に入社。東京都内の外食企業などの勤務を経て13年1月に家業であるチャンピオンカレーに入社。16年10月から3代目の社長に就任(写真:山岸政仁)
『ツァラトゥストラはこう言った(上)』
著者 : ニーチェ
訳者 : 氷上英廣
出版社 : 岩波書店
価格 : 924円(10%税込み)

 今回はドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』を紹介します。10年以上前に、ニーチェの解説や入門書のようなものが連鎖的に発刊され、ブームの様相を呈しました。国内でもかなり知られた名前でしょう。

 ニーチェは、自分の哲学を万人に分かりやすく説明する人ではありません。著作の多くは散文的で、詩的な体裁を取ったエッセーに近いものです。そのため、文意を直感的にすくい上げ、吟味するような姿勢が求められます。特に本書は架空の叙事詩に近く、実は非常にとっつきにくい本です。

 それでも紹介しようと考えたのは、人生のある重要な瞬間に本書を通じニーチェと出会ったことが、私という人間の深いところに影響を与えているからです。

 本書は、ツァラトゥストラという名の求道者が「神は死んだ」と直感するところから始まります。神の死んだ世界で、ツァラトゥストラは人々に、「人間である自らのみに依(よ)って立ち、その可能性を余すところなく活(い)かすような生き方」を教えるべく山を下りて人々と交わるのです。この生き方ができる人を本書では“超人”と呼びます。

 その中で、ツァラトゥストラと人々との対話、また彼自身の内的対話としてニーチェの考えが記されていく……。これが本書の大まかな流れです。

 歴史的な観点から見たとき、ニーチェの思想は「キリスト教会支配から世俗に権力重心が移っていく」という、同時代の大きな流れの結節点として捉えられます。キリスト教批判の色が強く、ニーチェを代弁するツァラトゥストラというキャラクターは、イエス・キリストを強く意識してつくられています。ですが、ここで私はニーチェの「歴史的・思想史的な重要性」や、ニーチェの哲学体系についての解説はしません。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1083文字 / 全文1891文字

【春割/2カ月無料】お申し込みで

人気コラム、特集記事…すべて読み放題

ウェビナー・音声コンテンツを視聴可能

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「日経トップリーダー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。