(写真:鈴木愛子)
(写真:鈴木愛子)

 前号に続いて、荻生徂徠(おぎゅうそらい)の『政談』を読んでみたい。彼がスゴイのは、今から300年も前に人間中心の視座から、実力主義の人材抜擢(ばってき)を目指そうとした点にある。その姿勢の根底には、中国古典の深い学びによって培われたバックボーンが凛(りん)として立っている。古くて新しい輝きが、今なお我々の心を照らすのである。

三、同じ意見の人を
  いくら集めても
  新しい知見は出てこない
  これを人材がいないという

 「自分と同じ意見で気が合う人だけを用いて悦に入っていてはダメだ。同じ考えの人が何人いても、結局は自分の意見と同じにしかならない。こういう状態を人がいないと言っているのだ」。徂徠の筆法は幕府の幹部に対して手厳しい。ただし、ここで大事なことは、進むべき方向・戦略は一致していなければならないという点。その上で、目標達成のやり方・戦術は状況によって変化してもよいという柔軟な考え方が前提にある。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます

残り1917文字 / 全文2343文字

日経ビジネス電子版有料会員なら

人気コラム、特集…すべての記事が読み放題

ウェビナー日経ビジネスLIVEにも参加し放題

バックナンバー11年分が読み放題

この記事はシリーズ「日経トップリーダー」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。