特集「『ガラス張り経営』の成功と失敗」で、公私混同の排除が成功の大前提だと分かった。私利私欲の大きさは報酬額の影響も受けやすい。中堅・中小企業の経営者やその周辺に取材すると、「報酬が一定の水準を超えると傲慢になっていく」という声を聞くことがある。「傲慢社長」が抱える経営リスクを検証。

(写真/PIXTA)
<特集全体の目次>
●怪文書が飛ぶ事態にまで深刻化 傲慢社長2人のリアルな告白

●開運商法に夢中になった傲慢社長の末路(3月19日公開)
●経営者が傲慢になる原因、“内なる甘え”に打ち勝つには?(3月22日公開)

 傲慢になった経営者は、どんな過程を経てそうなったのか。最終的に行き着いた先、そして、苦い経験から得た教訓は。実際に経験した2人が匿名で語る。自分に置き換えながら読んでほしい。



米田栄太(仮名)社長の場合

心は金で買えると思い上がるも
派閥争いの末、人間不信で辞任

 収入が増えて傲慢になった私は、最低の人間でした。

 20年近く前、3代目である私は、ある地方都市でサービス業の会社を経営していました。給与(役員報酬)はピークで月額700万円、所有する自社株式の配当も合わせた収入は年間1億円に達していました。

 常識的だった金銭感覚に微妙な変化が起きたのは、給与が月額100万円に届くようになった頃からです。手取りに換算すると60万円程度になり、コンビニエンスストアで当座の生活資金として20万円を引き出しても、口座にはまだ40万円が残っている。こんな余裕のある状態が毎月続くのかと、うれしくなったことを覚えています。

 それまでは、例えばボールペンは100円で売られているごく普通のもので済ませていたのに、数万円の万年筆を買うようになったのはこの時期です。しかし、まだ傲慢とは程遠かったですね。「筆記具によく数万円もかけられるね」という友人たちの冷めた突っ込みに対して、「そうだよね」と照れ笑いで応じる自分がいましたから。

 その後、収入の増加に併せて10万円の靴や数十万円のオーダーメードスーツ、数百万円の腕時計と、高級品を物欲のままに次々と買い込むようになると、誰も何も言ってこなくなりました。これはこれでいいんだなと自分で勝手に理解しましたが、周囲に言わせれば「米田に忠告しても無駄だから、もう言うのはやめよう」といったところだったのでしょう。

1000万円の高級車をポンと買う

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