製薬会社と対等な関係

 薬を作る工程は、鍵穴に合う鍵を探すようなものと言われる。「候補物質が多いほど鍵穴に合い、標的に効く物質を見つけ出す確率は高くなる」(パトリック社長)。

 創薬の世界では、効きそうな物質を見つけて特許を押さえ、臨床試験などを繰り返して10年、20年と長い時間をかけて最終製品の薬に育てる。その点、製薬会社はペプチドリームと組んで研究をすると、薬候補の物質をいち早く入手できる。製薬会社は少ない手間で開発候補を増やせるわけだ。

薬候補となる物質を数多くの種類、まとめて作り出せることが強みだ(写真:菊池一郎)
薬候補となる物質を数多くの種類、まとめて作り出せることが強みだ(写真:菊池一郎)

 これに対し、従来の創薬ベンチャーは、薬の候補物質を作る技術の一部だけを持つという会社も多い。この場合、最終製品となる物質の特許を押さえられないので、製薬会社に技術を安く値切られることもあるという。部品の下請け会社が大手の元請けから値引きを迫られるような関係だ。

 ペプチドリームは、技術の根幹となる候補物質をがっちり押さえ、「下請け化」を回避している。しかも、この強みを武器にして、ペプチドリームは複数の製薬会社といくつもの共同研究を同時並行で進める。

 多くの創薬ベンチャーは特定の候補物質に資本を集中して自社開発をすることが多く、失敗すると会社が傾くことも少なくない。

 「ペプチドリームは、一本足打法ではなく、たこ足打法でリスクを分散している」(金城聖史副社長)。これにより、製品化というゴールにたどり着く物質を生み出せる確率が高まる。

大手製薬会社と組んで研究する
●ペプチドリームのビジネスモデル
<span class="fontSizeM textColMaroon fontBold">大手製薬会社と組んで研究する</span><br>●ペプチドリームのビジネスモデル
複数の製薬会社と共同開発を進めてリスクを分散する。右上の図はたんぱく質の一種、「特殊ペプチド」が標的となる分子の表面に結合している様子
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リレー式で役割を分担

 なぜ、たこ足打法が可能なのか。ペプチドリームは製薬会社が選んだターゲットに効く候補物質を作り出すという、研究に当たる部分だけを手がけるからだ。

 臨床試験や薬を審査する各国機関とのやり取り、量産といった製薬会社が得意とする開発工程はすべて相手に任せる。

 ペプチドリームと製薬会社は互いにバトンを受け渡しながら、得意な工程に注力する。この対等な関係性に基づく役割分担によって、候補の物質が製品までたどり着きやすくなる。

 「創薬ビジネスは研究開発に時間と費用がかかる。しかも成功確率は低い。何重もの苦難が待ち受けているのに、従来の創薬ベンチャーはフルマラソン型ですべてを自社で手がけようとする。我々は製薬会社とリレーをする形でリスクを減らす」(パトリック社長)。

 多くの創薬ベンチャーがフルマラソン型を選ぶのは、製品化後に1社で利益を総取りして投資を一気に回収することを狙うから。最後に大きな利益が得られる場合もあるが、途中で資金が尽きてすべてがふいになってしまう可能性も高い。

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