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日経トップリーダーは東京商工リサーチとの共同調査による全国中小製造業利益率ランキングを作成(企業の抽出条件はこちらを参照)。直近5期を平均した営業利益率で上位の企業を取材し、高い利益率を維持する知恵を取材した。ここでは1位のペプチドリームと2位の成和インターナショナルを取り上げる。

ランキング 1
「コンスタントに稼ぐ」 ペプチドリーム
1人で走らずリレーでリスク分散

パトリック社長は、1975年生まれ。米国ダートマス・メディカル・スクールNRSAポストドクターフェロー、東京大学国際・産学共同研究センター特任助教授などを経て、2007年にペプチドリーム入社。常務・研究開発部担当などを経て、17年9月から社長を務める(写真:菊池一郎)

 ペプチドリームは東京大学の菅裕明教授が開発した技術を基に生まれた創薬ベンチャー。2006年設立で、製薬会社と組んで新しい医薬品の候補となる物質の研究開発をする。15年6月期から19年6月期までの5期を平均した営業利益率は52・2%で、今回のランキングの首位に輝いた。

 これを「創薬ベンチャーという特別な世界の会社だからできること」と受け流してはいけない。

 なぜなら、多くの創薬ベンチャーは薬の候補と見込んだ化合物が製品になるまで、赤字に苦しみながら経営をしていることが多いからだ。

長期戦を戦える会社

 実は、ペプチドリームは競合のビジネスモデルを研究し、不安定な経営を避ける新たな仕組みをつくり上げた。「少しずつ売り上げを立てて黒字にし、長期戦を戦える形にする」(リード・パトリック社長)ことだ。

 どうすれば、薬候補の物質が製品になる前に売り上げを立ててリスクを下げられるのか。それを知るために、ペプチドリームのビジネスを説明していこう。

 ペプチドリームが研究するのは「特殊ペプチド」というたんぱく質の一種。解熱薬などを化学合成する「低分子医薬」、生物が体内に持つ抗体を使ったがん治療薬などの「抗体医薬」に続く、薬としては第3のカテゴリーとなる。

 低分子医薬は安く作れるが、副作用が起きやすい。抗体医薬は効果は高いが、生物培養で作るので手間がかかる。特殊ペプチドはこの両者の中間的な存在だ。合成できるので比較的安価で、抗体のようにがん細胞などの標的を狙い打ちできると期待が集まる。

 ペプチドリームの技術的な強みは、候補物質を数多く短時間で合成できること。アミノ酸を結合してペプチドを作るときの特殊な触媒が肝だ。試験管の中で触媒が入った試薬を混ぜると、約1時間で1兆種類の特殊ペプチドを少量ずつ作ることができる。さらに、その中から薬の候補物質を効率よく探索する仕組みもある。