ご紹介をいただきました稲盛でございます。

 稲盛和夫(北京)管理顧問有限公司が共催する「2012稲盛和夫経営哲学重慶報告会」に、多数の中国企業家の皆さん、また日本の盛和塾生の皆さんにご参加をいただき、誠にありがとうございます。私はこの経営哲学報告会において、半世紀にわたる経営を通じて体得した自らの経営の考え方と方法を系統的にお話ししていこうと、一昨年以来、努めてまいりました。

(写真/アフロ)
(写真/アフロ)

 北京での「なぜ経営に哲学が必要か」と題した講演を皮切りに、青島で「経営12カ条」、また広州で「アメーバ経営」、そして大連において「京セラ会計学」について、それぞれお話ししてまいりました。それらの講演を通じ、経営における哲学の重要性、また経営の原理原則、さらには経営管理の考え方と仕組みにつきましては、すでにご理解いただいたものと思います。

 しかし、いかに高邁な経営哲学を掲げ、精緻な経営システムを構築したとしても、それが正しく運用されるかどうかは、ひとえにリーダーにかかっています。

 そこで、本日の私の講演では、「リーダーの資質」と題し、企業活動の先頭に立って奮闘するリーダーはいかにあるべきか、ということについて、お話しさせていただきたいと思います。

幌馬車隊の隊長に見るリーダーのあるべき姿

 私が、理想のリーダーとはどのような存在なのかと考えたときに、すぐに脳裏に浮かんできますのは、米国の西部開拓時代に登場する幌馬車隊の隊長の姿です。たとえば、ジョン・ウェイン演じる西部劇の映画に出てくるような幌馬車隊の隊長が、リーダーのあるべき姿を端的に示しているように思うのです。

 皆さんご存じのように、幌馬車隊は北アメリカ大陸の東部を出発して、未踏の西部の大地を目指し、数カ月、ときには1年以上にわたり、隊列を組んで、大移動を続けていきました。その途上では、あらゆる困難と障害が幌馬車隊を襲い、道半ばで挫折してしまった隊も数多くあったといいます。

 その幌馬車隊の運命を握っていたのが、リーダーである隊長でありました。そして、卓越したリーダーシップを発揮した隊長に率いられた幌馬車隊のみが、目的地である西部へ到達することができたのです。

 また、今日のマイクロソフトやアップルなど、米国西海岸に位置し、世界を席巻するIT産業の今日の隆盛も、そんな幌馬車隊の功績の延長線上に位置するものであり、その意味では、まさに幌馬車隊が、米国の発展の礎(いしずえ)を築いたと言って過言ではないものと思います。そのような幌馬車隊の隊長が示したリーダーシップは、従来から私が、「フィロソフィ」として著作や講演を通じ、皆さんにお話ししてきたことと同じことであり、リーダーに必要な要件そのものではないかと思うのです。

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