日経トップリーダーは東京商工リサーチとの共同調査による全国中小製造業利益率ランキングを作成(企業の抽出条件はこちらを参照)。直近5期を平均した営業利益率で上位の企業を取材し、高い利益率を維持する知恵を探った。ここでは17位の太平洋精工と20位の日進工具を取り上げる。

ランキング17
「川上を押さえる」 太平洋精工
開発段階から入り込み競合防ぐ

太平洋精工の知恵
  • 完成車メーカーの開発陣と直接組んで製品を開発
  • 仕様変更や販売前倒しなどにトップダウンで対応
  • 先行者利益でエンジニアを増やして足場を強固に
小川社長は1962年生まれ。慶應義塾大学を卒業し、94年に太平洋精工に入社。2001年5月から現職(写真=堀 勝志古)

 自動車用ヒューズ市場で、国内シェア約90%、世界シェアで40%以上を持つ太平洋精工(岐阜県大垣市)。米国の競合と世界シェアを分け合う2強体制を維持するニッチトップ企業だ。

 ヒューズは規定値を超える電流が流れたときに故障を防ぐ部品。自動車の電気系統にも、古くから使われていた。ただ、ハイブリッド車(HV)が普及し、電気自動車(EV)の開発が本格化して重要性が増している。

完成車の開発に食い込む

 太平洋精工の強さを支えるポイントの1つは、完成車メーカーに直結する大手部品メーカー(ティア1)に納品するティア2でありながら、多くの完成車メーカーの開発案件に入り込む関係性だ。

 小川社長は「当社の納入先はティア1の部品メーカーだが、開発は完成車メーカーとしている」と語る。太平洋精工は完成車メーカーの開発部門と直接、新製品に必要な要件を打ち合わせ、それに応える製品を開発する。常に5年ほど先に市場投入予定の新製品について打診されて開発チームを組んで対応する。

 自動車産業の場合、完成車メーカーが新製品の仕様を決定すると、その情報がティア1に提供される。ティア1はその情報を基に、ティア2に対し発注する。しかし太平洋精工が開発に携わっている製品の場合、ティア1に情報が伝わった時点で、ヒューズは太平洋精工の製品を使うよう指定されていることが多いという。完成車メーカーの要求に応えたからこその受注の仕方だ。太平洋精工だけでなく、開発力を武器に完成品メーカーに入り込み、メーカーや品番の指定を受ける好業績企業はいる。

 太平洋精工が完成車メーカーとの関係を持ち始めたのは、40年ほど前から。米国のヒューズメーカーから、特殊な製品のアジア地域での製造販売権を取得したのがきっかけだ。米国のメーカーは、太平洋精工の自動化が進んだ工場に感心して製造販売権を与えた。日本のメーカーがそのヒューズを使いたければ太平洋精工から買うしかない。そこで完成車メーカーと直接話せる関係が生まれた。

 こうして生まれた関係を生かし、開発力で応え続けた。トヨタ自動車から初代プリウス向けの高電圧ヒューズの相談を持ちかけられて開発を決断。産業機械用のヒューズなどを研究し、高電圧に耐えるヒューズを完成させた。

続きを読む 2/4 トップダウンで人員投入

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