M&A(合併・買収)業界に30年もいると大抵のトラブルは経験しますが、時には人生を木っ端みじんに吹き飛ばしかねないトラブルに見舞われます。

 前回、M&Aでトラブルが発生した場合に致命傷となる順番はヒト・モノ・カネと言いましたが、単純に金額換算するとモノに関するトラブルの被害が大きくなりがちのため、モノまわりへの注意も軽視できません。

 中でも被害が大きくなりやすいのは不動産関係です。あるホテルのM&Aでは、買収後に耐震の不備と違法建築が発覚。「あるべき場所に鉄筋が入っていない!」という耳を疑うような致命的なもので、建物の取り壊しなどに10億円近くを要する災難となりました。

 唯一の救いは買収したのがお客様ではなく、私自身が買い手として主導するプロジェクトだったことです。実は私の実家は建設会社でこの業界について決して素人ではないのですが、さすがにこれには参りました。

 ほかにも買収後に雨漏りがあり瑕疵(かし)担保責任の範囲を巡って数年間続く裁判になったり、断熱材にアスベスト(石綿)を使っていたため、その除去工事の費用をどちらが持つかで大もめしたりと、とにかく建物まわりのトラブルには悩まされ続けた苦い思い出があります。

 言い訳ではありませんが、こうした不動産を巡るトラブルは珍しくありません。M&Aは宅地建物取引業法(宅建業法)の縛りを受けないため、重要事項の説明が不要で、また現状有姿での引き渡しを原則とする一方、その確認をきちんと行わない買い手が多いからです。

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