『嫌われる勇気』の著者で、哲学者の岸見一郎氏がリーダーのあり方を説く連載の第37回。先行き不透明な時代、言葉巧みなリーダーに注目が集まりがちだが、拍手喝采される話が必ずしも真実を語っているとは限らないと岸見氏は説く。

 プラトンは民主制の堕落した形態である「劇場支配制」(劇場政治)について論じています。

 民主制のメリットは、誰もが自由に政治について論じることができ、家柄や財産とは関係なく、能力があれば国事に関わり、頭角を表すことができることでした。

 この能力の中核は言論の能力、弁論術でしたが、問題は、この技術が真理を語るためにではなく、情に訴え言葉巧みに聴衆を説得するために使われたことでした。

 弁論術は、裁判で言い負かされそうになった時にも、「弱い」議論を「強い」議論にしたり、時に詭弁を弄して裁判員を説得したりするために必要な技術でした。

 アテナイでは、裁判員に選ばれた市民が原告と被告の話を聞いて判決を下しました。裁判員たちが劇場の観客のように騒ぎ立て、原告と被告の双方を大声で称賛したり、非難したりしながら判決を下すことがありました。

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