「起死回生のメガヒット」「どん底からの復活」──。
企業経営について我々メディアが取り上げるとき、どうしても分かりやすく派手な物語を求めてしまいがちだ。もちろん懸命に事業と向き合うことで、奇跡のヒットや復活劇が起こることもあるかもしれない。
しかし、感動的なストーリーが都合よく紡がれることはそうそうない。国内では人口減の影響が顕著になり、世界の情勢も不安定になる中で「逆転満塁弾」を放つのはますます難しくなっている。
経営は日々の積み重ねである。毎日の行動が1年後、10年後、100年後の会社をつくる。ただ、すべきであると分かっていることでも、毎日続けるとなると意外と難しい。それが当たり前のことであればあるほど、「そんな当たり前のことは言われなくても分かっている」と軽視しがちでもある。
だが、本当に強い企業ほど当たり前といわれることをとことんまで突き詰め、実行し、競争力に結び付けている。できそうでできていないことも多い「凡事徹底」の強さを考える。

・毎月、地道に数字のズレの原因を探す 「知行合一」貫く前田工繊
・「微差は大差」 細かな物流の質で業績伸ばす建材販売会社
・コロナ禍でも強い居酒屋の秘密 「基本に忠実」が高収益の第一歩
飲食店は一部の個人店や特殊な業態を除き、定期的にメニューや内装のリニューアルをするのが一般的だ。そうしないと、毎年少しずつ客足が遠のき、売り上げが下がってしまうからだ。
そんな中、居酒屋がひしめく東京・神田を中心にワイン居酒屋「VINOSITY(ヴィノシティ)」を3店運営(他にも飲食店やワインショップなども展開)するシャルパンテは基本に忠実な店づくりに徹して、2011年の本店開店以来、ほとんどその姿を変えていない。

VINOSITYの看板商品の1つは、グラスに限界まで注ぐ「こぼれスパークリングワイン」だ。1杯当たり約240ミリリットル使う。3杯でワインボトル1本を使うボリューム感で、店のお得感を演出する。
こういった看板メニューでは、顧客満足を追求して原価率50%以上をかけたりするケースも多い。そんな中、この商品の原価率は33%。実はしっかりと利益が出る。
そして、同店で最も注文されるメニューが「VINOSITYのフライドポテトはこうだ!」。食材そのものは一般的なフライドポテトだ。特徴はホイップバターをたっぷりと乗せている点と、味付けを毎日変える点だ。
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