「起死回生のメガヒット」「どん底からの復活」──。
企業経営について我々メディアが取り上げるとき、どうしても分かりやすく派手な物語を求めてしまいがちだ。もちろん懸命に事業と向き合うことで、奇跡のヒットや復活劇が起こることもあるかもしれない。
しかし、感動的なストーリーが都合よく紡がれることはそうそうない。国内では人口減の影響が顕著になり、世界の情勢も不安定になる中で「逆転満塁弾」を放つのはますます難しくなっている。
経営は日々の積み重ねである。毎日の行動が1年後、10年後、100年後の会社をつくる。ただ、すべきであると分かっていることでも、毎日続けるとなると意外と難しい。それが当たり前のことであればあるほど、「そんな当たり前のことは言われなくても分かっている」と軽視しがちでもある。
だが、本当に強い企業ほど当たり前といわれることをとことんまで突き詰め、実行し、競争力に結び付けている。できそうでできていないことも多い「凡事徹底」の強さを考える。

・毎月、地道に数字のズレの原因を探す 「知行合一」貫く前田工繊
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前田工繊数字と向き合う凡事徹底

前田工繊(東京・港)は土木・建設の現場で使われる繊維系製品の製造が祖業だ。地域や業種を問わずにM&Aを実施しており、鍛造ホイールメーカーのBBSジャパンなどをグループに持つ。
前田工繊グループの1つである未来テクノは、2015年に民事再生を申し立てたオガワテクノからの事業譲渡で設立された。自衛隊が使うバッグや、海上でオイル漏れなどが発生した際などに使うオイルフェンスなど「厚物縫い」と呼ばれる分野の製品を得意とするメーカーだ。
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