『嫌われる勇気』の著者で、哲学者の岸見一郎氏がリーダーのあり方を説く連載の第48回。リーダーにとって、部下を信じることは「冒険であり賭け」であるとすれば、あなたには部下の可能性に賭ける勇気があるだろうか。

 韓国ドラマの「梨泰院クラス」に、飲食店を繁盛させるのであれば、料理の腕前がいまひとつである女性シェフを解雇する必要があるとマネージャーが社長に進言する話があります。

 店の立地、宣伝、サービスがよくても、一番重要なのは味です。美味しくなければ、また食べに行こうとは思わないでしょう。ですから、人柄がよくても、腕が立つシェフに代えるというのは、収益を上げるためには当然のことといえます。

 しかし、社長はそのシェフに「現状では力が足りないが、大切な仲間なので、店が好きなら二倍努力するように」と、二倍の給料を手渡します。彼女は期待に応えるべく努力し、一流のシェフに成長します。

 自分自身が何かに挑戦するのとは違って、仕事を任せるためには部下を信頼できなければなりません。リーダーにとって、部下を信じることは、「冒険であり賭け」(和辻哲郎『倫理学』)です。

 どうすれば、このような決断ができるのか。アドラーは、「自分に価値があると思える時にだけ勇気を持てる」といっています(Adler Speaks)。仕事についていえば、自分には価値、つまり能力があると思う人は仕事に取り組みます。

 ところが、仕事に取り組んでも、自分が望む、あるいは人から期待される結果を出せないかもしれないと思う人は、能力がないので仕事に取り組まないのではなく、仕事に取り組まないために自分には能力がないと思うのです。仕事をしなければ評価されることはないからです。

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