社長も交際費を事前申請

 平井社長がガラス張り経営を進めるに当たり、気をつけた点が公私混同の完全排除だ。もともと公私混同には人一倍気をつけてきたが、わずかでも社員が不審に思う点は残したくない。そう考えて、いくつか手を打った。

 まず、〝簿外〟で蓄えるという考えはやめた。「利益が安定しない頃は、生命保険などを活用して資金を持っておき、いざとなれば解約して会社に充当するつもりだった。ただ、経営も安定したし、財布を2つ持つような考え方は社員の誤解を招くのでやめた」。

 また、交際費・会議費の規定を厳格化し、それを平井社長自身にも適用した。具体的には、交際費・会議費は事前申請。他の役員や社員はそれぞれに申請先が決まっており、平井社長も経営管理担当の岸取締役に申請する。後日に内容も結果報告する。(1)

(1)交際費・会議費にルールを。役員の特別扱いはやめる

役員と社員の交際費限度額を同じに、と言っているのではない。私的に経費を使っていないか、使い過ぎていないかを社員は確認したい。

 その他の経費についても1万円以上の場合は社長であっても事前申請する。1万円という基準は低いようにも思えるが平井社長はこう話す。「基準を高くする代わりに、忖度(そんたく)して、必要に応じて事前に相談してね、というやり方もあるかもしれない。ただ、二重構造にすると、結局は機能しなくなる。厳格に運用し、組織の成熟度に合わせて基準を高くしていく」。

 この一環で平井社長は社用車も売却した。仕事の移動で使っていたが、社員の側から見たら、どこからどこまでが仕事なのか、プライベートとの境目が分かりにくいかもしれないと考えたからだ。

 「オーナー経営者なのに、なぜそこまでしなければいけないのか」と同意できない読者もいるだろうが、平井社長は透明性を高めることで社員が育つと考えている。

 「数字をオープンにしたからといって、社員の目の色が急に変わることはないだろう。それでも経営情報を皆で持っていれば、1人か2人かもしれないが、情報を基にして自分なりに考えて動いてくれる社員は出てくると思う」(2)

(2)即効性を期待しない

経営情報をガラス張りにしても、すぐに効果は表れないかもしれない。成果主義のように目の前にニンジンをぶら下げるものではないからだ。だが時間はかかっても、確実に社員が根本から変容していく。

 ガラス張り経営と並行して、予実管理の精緻化も進めた。

 15年から部長クラスが集まって次年度の経営計画を練るようにしたが、実績が予算を下回る事態が相次いで、社員のモチベーションが下がったという。高い目標を掲げるのはいいが、具体的な行動に落とし込めていなかったからだ。

 営業主体の会社なので、どうしても目標値が高くなる傾向がある。そこで、平井社長、岸取締役は、各部長とのコミュニケーション量を従来の2、3倍に増やして、そのやり取りの中で行動計画に基づいた目標値を探るようにしている。

モチベーションも調査

 「ようやく2020年1〜3月期に予実管理がうまくいった」(岸取締役)。そこに新型コロナ禍が到来したが、経営情報のガラス張りと、それをベースにした深いコミュニケーションにより、組織がうまく回るようになったおかげで、業績は回復している。

 一方で組織のコンディションを確認するため、社員のモチベーション調査も実施する。「新規事業に投資をすると、既存事業の利益が奪われる。社員にもっと還元してほしい」といった意見が出たりするという。個々の意見にはその都度向き合い、議論する。

 オーナー社長は特別な存在であり、お金の使い方も特別扱いが許されるという理屈は、これからの時代には通らない。意思決定はワンマンで構わないが、情報のブラックボックス化は解消するというのが、組織づくりの鉄則だ。

(この記事は、「日経トップリーダー」2021年3月号の記事を基に構成しました)

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2/22ウェビナー開催、ウクライナ侵攻から1年、日本経済「窮乏化」を阻止せよ

 2022年2月24日――。ロシアがウクライナに侵攻したこの日、私たちは「歴史の歯車」が逆回転する光景を目にしました。それから約1年、国際政治と世界経済の秩序が音を立てて崩壊しつつあります。  日経ビジネスLIVEは2月22日(水)19時から、「ウクライナ侵攻から1年 エネルギー危機は23年が本番、日本経済『窮乏化』を阻止せよ」と題してウェビナーをライブ配信する予定です。登壇するのは、みずほ証券エクイティ調査部の小林俊介チーフエコノミストです。世界秩序の転換が日本経済、そして企業経営にどんな影響を及ぼすのか。経済分析のプロが展望を語ります。視聴者の皆様からの質問もお受けし、議論を深めていきます。ぜひ、ご参加ください。 

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