代替わりして事業を変革した経営者を、藻谷ゆかり氏が発掘。目のつけどころと変革のプロセスを解説する。

 「事業トランスフォーマー」とは、家業を承継し、一代で全く異なる会社に事業変革(トランスフォーム)した経営者のことである。トップバッターは名古屋市にある吉桂(よしけい)の吉田浩一社長。家具卸から家具を企画製造し販売する会社に事業変革した。

 吉桂は1936年創業の家具卸で、高度経済成長期からバブル経済期にかけては、100万~300万円台の「婚礼家具セット」を勢いよくさばいていた。

 家具業界は91年に取引高が過去最高となり、吉桂も同年に過去最高の107億円の売り上げを記録、しかし経営は赤字だったという。吉田社長は「低粗利率、高人件費率、高返品率と生産性が著しく低かった」と語る。つまり人員過剰である上に、商品が消費者のニーズに合っておらず、小売店から返品されることが多かったのだ。

 家具業界は、バブル崩壊後の30年間で劇的に経営環境が変わった。マンションなどで作り付けの家具も増え、婚礼家具の需要が激減。輸入家具を扱うニトリやイケアといった小売りが台頭し、家具の単価が従来の半額近くになった。

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