瀬戸健RIZAP社長の素顔は「理念」の人だ。毎週1、2回、社員との昼食懇談会を重ね、自らの経営に対する考え方を広めることに努める。現場回りの頻度も上げるなど、グループの復活に向けて瀬戸社長の苦心が続く。

瀬戸社長は、課長クラスの社員と生き方や考え方の対話を始めた(写真:清水真帆呂)

 「大事なのは結果ではなくて、むしろ『今現在』ではないでしょうか。物事をやっていくときはプロセス自体が目的で、ゴールはそのことに対する評点でしかないとすら思うんです」

 昨年12月中旬、東京・新宿のRIZAPグループ本社。瀬戸社長は人事部門の課長や主任8人と昼食を取りながら対話を始めた。テーマは特にない。社員から仕事の中で感じること、抱えている問題を話し、瀬戸社長も自分の生き方、考え方を語るだけ。

 「プロセス…」というコメントも、「どんなふうに目標を達成したらいいか迷うことがある」というある課長の問いかけに答えたものだ。聞きようによっては青臭い話ばかりだが、それを繰り返し続ける。

 「ストレスにどう対処しているのか」と問う課長には、「すべては考え方。雨が降ると大人は嫌だと思うけど、子供はいろんな遊びができてうれしがったりしますね。どういう見方をするかで生き方は全く変わると思うんです」。

 こんな昼食懇談会を瀬戸社長は昨年10月から毎週1、2回続けている。懇談会の以前も、フィットネスジムのトレーナーや店舗責任者、あるいは新入社員たちと対話してきた。

 一方で昨年中頃までは、社内に自分の席さえ設けなかった。パソコン1台を抱えて、空いた席やミーティングスペースで仕事をする。狙いは「より多くの社員と話せるから」と瀬戸社長。さすがに組織が大きくなって席だけは持つようになったが、社員たちとつながることを常に意識しているという。

生き方について対話

 ジムの派手な宣伝や多数のM& Aばかりが注目され、成長一本槍の経営者と見られがちだが、瀬戸社長の素顔は「理念」の人。考え方や姿勢を大事にしている。19年3月期に大幅赤字を計上したどん底からの再生局面でも、社員とのさらなる対話を通じて自らの経営に対する考え方を広め続けた。

 アイドルライブやトレーディングカード対戦大会を毎週催し始めたワンダーコーポレーション。年間数千回に上るイベントは、自社でつくる付加価値の拡大を目指したものだが、底流にあったのは人の心の洞察。

 「人は何から満足感を得るのか。我々はしっかりとそこに目を向けているのか」(瀬戸社長)である。

 とはいえ、実際の瀬戸社長はどこにもいるひょうきんな若者のよう。人懐こい笑顔を絶やさず、オーナー創業者には珍しいほど、社員には丁寧な態度で接する。

 それには理由があるのだろう。RIZAPグループは急成長の過程で、社外から大量の人材を幹部に迎えている。元カルビー会長兼CEOの松本氏をはじめ、前職には大創産業やニトリホールディングス、ファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、日産自動車などの著名企業が並ぶ(既に退職したケースも含む)。

 幹部だけではない。約80社を買収した結果、中堅層以下にも他社出身の社員がたくさんいる。瀬戸社長が笑顔で考え方を何度も語るのは、グループをまとめるためには必要不可欠なのだろう。

続きを読む 2/3 現場回りで話し続ける

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