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 父が結婚式場を建てたのは、80年前後、私が小学生の頃。経営は幹部に一任していました。

 だいぶ早くから経営不振に陥っていたようですが、それでも式場を畳まなかったのは、息子の私に継がせたかったから。大学を卒業したら、すぐ入社するように言われていましたが、私はリクルートの内定を得ると、父に「5年だけ」と約束して就職しました。

江副浩正の凄み

 リクルートの新卒採用は面白くて、それと知らせずにOB、OGを学生と会わせては、大手志向の就職活動の甘さを巧みに指摘し、「うちは面白いぞ」と口説くのです。私もその手法に引っかかったのですが、入社直後に配属された人事の部署で裏側にあった仕組みを詳しく知り、脱帽しました。

 入社したのは、創業者の江副浩正さんのスキャンダルから間もない時期。古参の上司があるとき教えてくれました。「江副さんにカリスマ性なんてない。ただ2つのことにこだわった。人材の採用と活躍しやすい環境づくりだ」。

 リクルートが新卒1人の採用に4000万円以上の予算を用意していると知り、女性マネジャーが当たり前のようにいるのを目の当たりにしていたので、納得しました。創業者がいなくなってもダイナミズムを失わない組織。その根幹にあるものは人材なのだと。

(写真:栗原克己)

 しかし、新卒入社から1年後、父が病で倒れ、約束より早く、後継者として結婚式場に入ることに。そこで待っていたのは前述の通り、ひどい職場でした。

 遅刻なんて当たり前。担当する結婚式の前日に飲み過ぎて、社員がドタキャン。出勤しても、クロスを敷いたテーブルの下に隠れて昼寝。業務改善の提案などしようものなら、ハブ(仲間外れ)です。