FCビジネスは、加盟店と本部の二人三脚とよく例えられる。新規事業として取り組む中小企業の経営者を、本部はどう見ているのか。加盟店を見続けてきた本部のトップとして、ゆで太郎システムの池田智昭社長、センカクの西山由之会長の2人に話を聞いた。

 当社は事実上個人オーナーの加盟店が多い飲食のFCです。だから事業の多角化として加盟するケースは少ない。その前提でこれからお話しします。

 事業の多角化としてゆで太郎に加盟されるパターンについては、厳しい言い方になりますが、少なからず嫌気が差している部分があります。安易に考えていて失敗するケースが多いからです。

 大抵の加盟店オーナーは本業で出来が良くない社員を飲食部門に回してきます。本気になって取り組む気があるのかなと疑問です。

 経営者の自分は本業から離れられない。そうした事情があるのかもしれません。でも新たに取り組む業態にもかかわらず、トップが出ていかないで成功するほど甘い世界ではないのです。

 本業が伸び悩んでFCビジネスに活路を求めているなら、なおさらです。「本業を少しずつ縮小させて、ゆで太郎を次の主力事業にしたい。だからやらせてください」。口では調子がいいことを言う加盟希望者は珍しくありません。でもオープンしたら、頑張らない。

あり得ないミス

 そばを店内で粉から製麺するゆで太郎は手間も技術も求められる。オーナーが本気で取り組んでくれないと、お客様に喜んでいただけるレベルにはなりません。

やり切る覚悟がないなら手を出すな
やり切る覚悟がないなら手を出すな
池田智昭(いけだ・ともあき)
1957年生まれ。持ち帰り弁当「ほっかほっか亭」のFC店の共同経営者、本部のスーパーバイザーを経て、信越食品(東京・大田)が運営するそば店「ゆで太郎」をFC展開するゆで太郎システム(東京・品川)を2004年に設立(写真/尾関裕士)

 理想はオーナーがそのまま店長を務めること。自分の店にお客様が来たら、うれしくて笑顔で接客するし、頑張ります。それがかなわないなら、店に頻繁に足を運んで自腹で食事して、利用者目線で現場に小うるさく口を出す。全幅の信頼を置く、自分の分身ともいえる幹部を店に送り込むのもいい。でも実際は、なかなかそうならない。

 当然、店はうまく回りません。気が緩んでいるのか、分量が少なかったり、品切れが起きたり、かき揚げを割れたままで出していたりする店もありました。さらには、ゆで立てが売りなのに、ゆで置きしているなんてあり得ないでしょう。でも、お恥ずかしながらFC店で実際にあった話です。

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