新型コロナ下で各企業は先行きに不安を感じながら経営を進めている。こうした状況の中、企業や社員は今後どう変わっていくのか。グループで採用支援業などを手がけるビジョナルの南壮一郎社長に話を聞いた。
(聞き手・本誌編集長 北方雅人)

みなみ・そういちろう
1976年生まれ。米タフツ大学卒業後、モルガン・スタンレー勤務を経て2004年東北楽天ゴールデンイーグルスの球団創設に携わる。09年にビズリーチを創業し、社長に就任。20年に持ち株会社のビジョナル社長に就任(写真/菊池一郎)

南さんがビズリーチを創業したのが2009年。スタートアップの代表格として、この10年で採用プラットフォームなどの事業を大きく拡大してきました。そんな南さんの目に、コロナ下の企業や個人はどのように映っていますか。

:「人生100年時代」に突入し、私たちは80歳まで働かなければならなくなりました。65歳で年金をもらって引退するというシナリオは完全に崩れ去った。その結果、この10年で個人の仕事への意識は大きく変わりました。

 10年前なら、大企業に勤めて終身雇用されることを多くの人が望んでいた。しかし、今は違います。大学生に、最初に勤めた企業で定年まで働きたいかと尋ねたら、誰も手を挙げないと思います。60年という長いキャリアを1社で勤め上げることが想像できなくなっている。転職が当たり前になった。

 そうした意識変化がコロナで加速しているのです。事業は生き物ですから、企業はそれに対応する組織に変えなければならない。

 今までは企業側の立場が強くて、社員を選んでいた時代です。しかし、これからは社員が企業を選ぶ時代に確実になるし、現にそうなりつつある。人口減少に伴って労働力人口が減る中、優秀な人材は取り合いになります。個人が選択権を持つようになったのです。

この会社で成長できるか

人材の流動性が高まる中で、各企業はどのような取り組みをすべきでしょうか。

:会社のビジョンやミッションに共感し、加えて労働市場における自分の価値が高まるのであれば、社員は定着するでしょう。反対にビジョンやミッションもなく、その会社にいても個人として成長できないと分かれば、容赦なく転職する。会社と社員の関係性が今までとは異なってきています。

 また、最近、富の格差が話題になっていますが、個人においてもすごく優秀な社員とそうでない社員の二極化も進むと思います。

 私たちは病気にかかっていなくても、体が健康かどうかをチェックするために健康診断を受けますよね。それと同じように今後は、キャリアの健康診断を絶えずするように個人がなります。

 個人が自分の労働市場における価値を確かめ、ビジョンが明確で社会課題を解決できる会社、かつ自分の価値を高く評価してくれる会社に人が流れるでしょう。

 これは歴史的に見ても、証明されています。産業革命がそうだったように、新しい技術を積極的に取り入れた会社に人が流れて勝ち残りました。今、デジタル・トランスフォーメーション(DX)で同じことが起きようとしている。

そうした変化の中、南さんはどう舵取りをしていますか。

:我々のミッションは「新しい可能性を、次々と」です。「次々と」というのがポイントでして、社会の未来をつくり、社会にインパクトを与え続けるにはどうすればいいかと考えてきました。

 そこで5年ほど前から、祖業の採用支援だけでなく、モチベーションチェックやエンゲージメント(企業への愛着心)、人事体系の構築などに事業領域が拡大しました。ヒューマンマネジメント全体の事業ができるようになった。

 そんなとき、任せるに足る若手の人材がそろったので、2020年2月にホールディングス(持ち株会社)体制に移行し、私はそこの社長に就きました。

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